第68話 成立
私に用意された選択肢は三つある。
一つ目はキャスティルの要望を受け入れて琉緒の監視に当たることだ。
少なくとも、これ以上キャスティルを刺激するようなことはないし、ここから無事に出られる可能性が一番高い。
仕事を終えた後のことはどうなるのか分からないが、最悪の場合を想定する必要はあるかもしれない。
二つ目は要望を受け入れたフリをして、やり過ごすことだ。
問題はキャスティルと店員の女性を騙せるかがカギになる。
もし二人が私の心を見透かしたら逆鱗に触れたら、ここから出られる可能性はゼロに等しいだろう。
私一人の問題なら二つ目の選択肢を選んでもいいが、ルミスや琉緒に危害が及ぶ可能性がある以上、二つ目の選択肢は却下だ。
三つ目は要望を拒否して徹底抗戦する構えだ。
こちらは穏便にここから出られる可能性が一番低い。
二つ目同様にルミスと琉緒に危険が及ぶ可能性があり、三つ目の選択肢も却下だ。
「さあ、はっきり答えてもらおうか?」
「……わかりました。その仕事、引き受けます」
私は最善の選択肢を選んだつもりだ。
それと同時にルミスが解放されて、彼女は私の選んだ選択肢に納得がいっていない様子だ。
「それなら、クシャちゃんの代わりに私がやりますわ。尾行、監視は私の方が上手くできると思いますし、それでよろしいでしょう?」
「よろしくねえよ。部外者は引っ込んでろ」
ルミスが私の代理を希望するが、キャスティルに却下される。
「お前にしかできない仕事だ。仕事の放棄又は続行が不可能とこちらが判断した場合、お前と栗山琉緒はしばらくここに留まってもらう。勿論、他言無用で破った場合は仕事の破棄と見做す。監視の期間はお前達が遊園地のデートが終わるまで、その後は責任者がお前と栗山琉緒に接触する手筈だ。お前が疑問に思っていることは責任者が全て語ってくれるだろう」
ロックされていた喫茶店の入り口の扉は解除されると、仕事の契約は成立された。




