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第46話 自己紹介

 一週間後、私は聖カトメイル学園の制服に身を包み、学園の門を潜った。

 学校に通うのは二十年以来だが、女子高に通うのは初経験だ。


(やっぱり慣れないなぁ……)


 ヒラヒラのスカートはやはり足下がおぼつかない。

 座り方も意識しないと、大変な目に遭うのは経験済みだ。

 校章の件については目新しい進展もなく、転移先の公園も時空の歪み等の危険はないと判断されて立ち入りの制限は解除された。

 私は職員室で担任の先生に挨拶を交わすと、予鈴が鳴って担任と共に自分の教室へ移動を始める。

 廊下には予鈴に合わせて女生徒達が教室に入って行くと、担任らしき先生達も各教室に入って出席を取り始める。


「おや、なかなか似合っているじゃないか」


 正面の階段から降りて来た修道服姿のラーナが私に声を掛けて来た。

 傍にいた私の担任は彼女の登場に驚き、丁寧な挨拶を交わす。

 制服姿をラーナに披露したのは初めてで、事情を知っている彼女の前では気恥ずかしい。


「その……おはようございます」


「ふふっ、おはよう。学園生活をエンジョイしたまえ」


 ラーナは私を労うように私の肩をポンポンと叩く。

 軽い励ましだったのかもしれないが、余計に緊張感が増していく。

 朝の定例会に出席するため、ラーナはそのまま廊下の奥へと消えて行った。

 やはり、彼女は苦手だ。

 重い足取りで、自分の教室前に到着すると担任と共に教室へ入る。

 私と担任が教室に入ったと同時に教室から話し声はピタリと止んだ。

 女子生徒達の無言の視線が一斉に私と担任に向けられる。

 私が異世界転生する前の学校生活では転校生が来ると分かった途端、どんな子なのか、色々と妄想が膨らんだりしてクラスは一種の祭りのような大賑わいであった。

 実際、転校生を目の前にしたらクラスの生徒達は目を輝かせて休み時間等で色々と質問攻めをする現場を見てきた。

 前世の経験談も踏まえて、私もヒーローのような扱いを受けるのだろうかと思ったが、その予想は少し外れた。

 クラスの半数近くの女子生徒達は次の授業に使う教科書やノートを取り出して、そちらに目を通し始めたのだ。

 担任からクラスの女子生徒達に向けて簡単な自己紹介をするように促されると、私は黒板に名前を書いて自己紹介を始める。


「アメリカから転校してきましたクシャ・アルリーナです。よろしくお願いします」


 一応、この世界で私はアメリカ国籍のクシャ・アルリーナとなっている。

 奈緒の働きがけのおかげで身分証明についてはクリアしている。

 頭を軽く下げて自己紹介を終えると、クラスの女子生徒達から儀礼的な拍手の歓迎がなされた。

 だが、一人だけ猛烈な拍手と目を輝かせて私を出迎える女子生徒がいた。


「クシャちゃん! こっちだよ」


 空いている席へ座ると、隣の席には制服姿の琉緒がいた。

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