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第43話 次

 大量のメロンパンを引っ提げながら、琉緒は鼻歌交じりでご機嫌のようだ。

 角底袋から、ほのかな甘い香りを覗かせるメロンパンに私は奈緒とルミスを巻き込み、申し訳ない気持ちでいた。


「信也君が学校へ通い始めたら、またこうしてデートしようね」


 琉緒はメロンパンの一つをかじりながら、笑顔で語りかける。

 そんな彼女を見ていると、私も釣られて自然と笑みがこぼれる。


「勿論だよ。今度は遊園地とかに行くかい?」


「うん! 遊園地いいね。じゃあ、今度のデート場所は遊園地だ」


 遊園地へ行く約束を交わすと、琉緒は手を差し出して互いの小指を曲げて絡み合わせる。

そして、指切りげんまんの歌を唱え始める。

 私は軽い気持ちで琉緒のおまじないに耳を貸していると、琉緒はいつになく真剣な表情になっている。


「指切った」


 絡ませていた小指を離すと、おまじないを終えて約束が取り交わされた。


「絶対に……デートしようね。もう、私の前からいなくなったりしないでね」


 琉緒は俯いたまま、私の胸に抱き付く。

 その衝撃で私はメロンパンが入っていた角底袋を手元から放してしまった。


「琉緒ちゃん……俺はどこにも消えたりしないよ」


 私は琉緒の意図を汲み取って、彼女の頭を優しく撫でながら安らぎの言葉を投げかける。

 軽々しく次のデートを約束したが、琉緒にとって『次』はトラウマになっていた。

 前世で初めて動物園のデートをした後、次のデートの約束を交わしたが、その約束は永遠に叶わなくなった。

 しかし、ダークエルフとして琉緒の前に現れた私と出会い、琉緒の中で止まっていた時間は動き出した。

 今度こそ、『次』へ繋ぐための指切りげんまんは琉緒にとって特別な意味が含まれていたのだ。


「嘘ついたら針千本飲ましちゃうよ。本当だよ」


「それは勘弁願いたいから、ちゃんと約束は守るよ。前世で約束を守れなくてごめんね」


「許してあげないって言いたいところだけど、次の遊園地でデートできたら許してあげる」


「うん、必ず約束は守るよ」


 私はそれを証明するために先程の琉緒がやった指切りげんまんの歌を唱えて見せた。

 この二人で交わした約束は絶対に成し遂げる。

 彼女の辛かった気持ちを(ないがし)ろにしないためにも――。

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