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第40話 私達の順番

 一時間程経過すると、私達の順番が回って来た。

 普段は時間を気にせず触れ合えるのだが、飼育員の誘導で制限時間が設けられている。

 飼育員からウサギ用の餌を受け取ると、私達はゆっくりウサギの群れに近付いて中腰になって餌を与え始める。


「つぶらな瞳ともふもふした感触が可愛い」


 琉緒は手慣れた様子で餌を頬張っているウサギに愛着を持って接している。


「信也君もそう思うよね?」


「うん、小さくて可愛いね」


 私は一歩引いたところで小さく頷いて見せる。

 言動と行動が一致していない私に琉緒は私の手を引いて、そのままウサギに餌を与える。

 数羽のウサギが私の手に集まって来ると、ぎこちない笑顔で奈緒に答える。


「ほらほら、全然怖くないよ」


 琉緒は飼育員からウサギを一羽抱き抱えると、脇に控えていたカメラマンがシャッターを切る。

 暴れたりしないので大丈夫ですよと飼育員から簡単な助言をもらって、私もウサギを抱き抱える。

 もふもふした温かい肌触りが伝わり、目を瞑っていれば猫を抱いているのと然程変わらない感じだ。


(可愛い猫だと思えば……)


 抱いているのは猫だと自己暗示をかけると、次第にこの触り心地は悪くないと思えてくる。

 次第に私の頬が緩み出して、琉緒も私と肩を並べたところをカメラマンがシャッターを切る。

 そうしている内に制限時間も過ぎて、琉緒はウサギをそっと群れに帰した。


「信也君、もう時間だからウサギさんを放してあげよう」


 琉緒に促されると、私は現実に戻されて目を開ける。

 そこには猫ではなく、私が苦手とするウサギと目が合ってしまった。


「うわっ!」


 私は悲鳴にも似た声で抱いていたウサギに対して腰を抜かしてしまった。

 尻餅をついた私の腕からウサギは逃げ出して、群れの中へ戻って行った。

 ウサギが柵から逃げ出すような事態にはならなかったが、腰を抜かした私は飼育員と琉緒に介抱されながら、その場を後にした。

名前の修正を行いました。

奈緒→琉緒


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