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第28話 特待生

 トイレで本来の目的を終えると、私は早々に駐車場へ向かった。

 それと同時に終業のチャイムが鳴ると、無人だった校内の廊下は女子生徒達で華やかな賑わいとなった。


「すみません、お待たせしました」


「少し遅かったが、体調でも悪くしたか?」


「実はトイレで女子生徒と鉢合わせてしまって……」


 私は奈緒の車に乗り込むと、心配そうに奈緒は声を掛ける。

 トイレで起こった経緯を簡単に説明すると、奈緒は車を発進させて車道を走りながら笑い声を上げる。


「ははっ、多分その子は外から入った生徒だろうな」


 奈緒の話によると、聖カトメイル学園は幼稚園から大学まで内部進学できるエスカレーター式の私立学校で、学生の九割は幼稚園から通っている内部生で占めているようだ。

 奈緒の学生時代には中学から外部生の生徒を募集するようになったようで、外部から生徒を受け入れているようだ。

 私がトイレで出会った女子生徒が外部生なら、お嬢様に似つかわしくない言動や振る舞いも納得できてしまう。


「奈緒さんや琉緒ちゃんは外部生だったのですか?」


「私達は生粋のエスカレーター式で育ったお嬢様さ」


「そうなんですね……」


 一部、例外はあるようだ。

 それはさておき、表向きには私を特待生として編入させるようだ。

 勿論、異世界人でありダークエルフの素性は隠し通すことになる。

 この件に関しては奈緒や理事長を含めた異世界人を保護する国の機関が把握済みのようで、身内である琉緒も承知している。


「君はしっかりしているから大丈夫だと思うが、異世界人だと悟られないように学校生活を満喫してくれ」


「はい、私も騒ぎになるような真似はしたくないので気を付けます」


「何か困りごとがあったら、私や理事長を頼ってくれ。万が一、正体がバレそうになったら理事長が対処するよ」


「まさか……正体がバレたら退学とか?」


「いや、普通に記憶処置を施して忘れてもらうだけさ」


 さらっと退学より恐ろしい単語が飛び交う。

 正体がバレてしまったら、騒ぎになる前に一身上の都合で自主退学も視野に考えていた。

 記憶処置とは吸血鬼である理事長が人間の記憶に干渉できる魔法を行使して、正体の部分の記憶を消すことらしい。

 記憶に干渉する魔法は取り扱いが難しく、魔法の心得がある者でも理事長以外が使用すれば記憶そのものを消してしまう危険性があるようだ。


「君も魔法は扱えるから釈迦に説法かと思うが、遊び半分や無茶な行使は厳禁だ」


 奈緒から約束してくれと念押しされて、私は小さく頷いて答えて見せる。

 魔法は便利な反面、命を落とすリスクも伴う。

 これは異世界でダークエルフの両親から口酸っぱく言われて来たので、その教えは元の世界であろうが関係ない。


「口うるさい女の忠告だと思うかもしれないが、一つよろしく頼むよ」


 奈緒は申し訳なさそうに話を締め括ると、車はしばらくして奈緒が契約している地下駐車場へ戻って来た。

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