第22話 推察
私は異世界転生の経緯をラーナに語り終えると、彼女は腕を組んで耳を傾けていた。
「やはり面白いねぇ。偶発的なものなのか、神の啓示と捉えることもできなくはない」
「神の啓示となると、我々に何か警告をしているとか?」
「あるいは神が課した試練かもしれない。現時点で判別しているのはクシャちゃんが私好みの女の子ってところだねぇ」
奈緒の疑問にラーナは推察したことを述べると、私の腰に手を添えてスキンシップを図る。
学園の理事長に気に入られるのはいいのだが、獲物を狙うような鋭い眼光に私は戦々恐々としてしまう。
「まあ、異世界転生の原因究明はあらゆる角度から時間をかけてゆっくり解いていくのがベストかな」
「あんたがそう言うのなら、間違いないだろう」
「私も転生魔法の類は専門家じゃないから、役に立つアドバイスはあまりできんよ。協力できるところは惜しみなくするつもりさ」
奈緒は納得するように頷くと、ラーナはにこやかに答えて見せる。
二人の会話から、ラーナは魔法についての教養があるように見受けられる。
この世界で魔法を行使できる人間がいるとは考え難いが、奈緒の話では不完全ながらも異世界へ移動できる手段があることから、全くない訳ではなさそうだ。
「せっかくだから、私が学園内を案内したいところだけど所用で出かけないといけない。悪いけど、お二人さんで見学ツアーを楽しんで来てくれ」
「忙しい中、時間を割いてすまなかったな」
「ふふっ、貴女の元気な姿を拝見できて有意義な時間を過ごせたよ。また年末にパーティーでも開こうか」
「美味い酒を用意してくれるなら、前向きに参加を検討しておくよ」
ラーナは時計を確認すると、どうやら仕事の都合で出かけないといけないらしい。
奈緒も彼女を引き止めるつもりはなく、軽く雑談に興じて見送るつもりだ。
必要な書類を鞄に入れて持ち運ぶと、ラーナはそのまま理事長室を後にした。
「それじゃあ、私達は学園内の見学へと行こうか」
「あっ、はい」
主人のいなくなった理事長室に私は呆然と立ち尽くしていると、奈緒は私に手招きしながら廊下へ出る。
私も一歩遅れて理事長室を後にすると、迷子にならないように奈緒の後へ続いた。




