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第21話 理事長②

 理事長が書類を片付けて私の横に立つと、中腰になって私と視線を合わせる。


「肌がツヤツヤで凄く可愛らしい女の子ねぇ」


 舐めるような視線で私を隅々まで見渡す理事長に妙な緊張感が生じる。

 それだけなら息を殺して我慢できたのだが、この理事長はとんでもない行動に打って出る。


「ひゃっ!」


 私は思わず甲高い声を上げてしまった。

 生温かい感触が私の左頬に当たったのだ。

 私はその正体を確かめるために振り向くと、理事長が小さな舌を出して微笑んでいる。


「これは珍しい。経験豊富だと思っていたのだけど純粋無垢な女の子なのね」


「なっ……いきなり何を?」


「身体検査ってところだよ。ダークエルフのクシャちゃん」


 理事長は構わず私の正体と名前を告げて今度は小さな舌で私の耳を一舐めする。

 魔法で人間と変わらない耳に変化させているが、基本的に耳を触れられると敏感に反応してしまう。

 ダークエルフにとって長耳は敏感なセンサーであるのをどうやら熟知している理事長は私の反応を面白がって耳に息を吹きかけたりする。


「あの……もう止めて」


「最近、年齢のせいで耳が遠くなってしまってね。小さな声は聞き取り難いのだよ」


 私は精一杯の気持ちで拒否反応を示すが、理事長は年齢を理由に耳を澄ませる仕草をして見せる。

「もう十分だろ。それ以上はセクハラになるぞ」

「んー、もう少し楽しみたかったけどね」

 奈緒が間に入って二人を引き離すと、理事長は残念そうな顔になる。

 余韻は時間の経過と共に引いていくと、私は両耳を両手で押さえながら理事長に警戒心を覚える。


(何なんだ、この人は……)


 ルミスもそうだったが、最近の大人の女性は過度なスキンシップが流行っているのだろうか。

 綺麗な人なのに、まるで反省していない彼女は大胆不敵だ。


「薬物等の違法性はなさそうだし、報告書の通り問題なさそうだね。まあ、あるとすれば異世界転生か」


「あんたはそれについてどう思う?」


「そうだねぇ。転生魔法は古代に伝わる高度な魔法を駆使すれば可能かもしれない」


「現実的ではないってことか」


「普通は在り得ないね。最近流行りの異世界ファンタジー漫画や小説の類と疑われても致し方ないよ」


 奈緒と理事長は私を無視して意見を交わし合う。

 そして改めて理事長は私に視線を合わせると、今度は片手を差し出して挨拶を交わす。


「先程は失礼したね。私はこの学園の理事長を務めるラーナ・フリメールだ」


「ど……どうも」


「今回は不運にも異世界から迷い込んだクシャ・アルリーナとして編入を許可するよ。異世界転生については色々と話を伺いところだ」


 聖カトメイル学園への編入が許可された私は複雑な心境で握手に応じる。

 異世界転生については学校見学するだけのつもりだったので、何も語るつもりはなかった。

 私はチラッと奈緒に視線を送ると、この怪しい理事長に事情を話していいものかと判断を仰ぐ。

 奈緒は私の心情を察して小さく頷いて見せると、「性格はアレだが大丈夫だ」と付け加えて答えてくれた。

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