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第20話 理事長

 木々のせせらぎに囲まれ、広い敷地に立派な建物が連なっている。

 一見すると避暑地の別荘と勘違いしそうなところだが、奈緒の話によるとこの一帯は全て聖カトメイル学園の管理下らしい。

 正門に回ると守衛が一人立っており、奈緒は運転席越しから守衛に書類を提示する。

 書類を確認した守衛は私達をそのまま敷地内に通すと、車は外来用の駐車場に停める。


「さあ、着いたぞ」


「予想はしていましたが、普通の学校とは全然違いますね」


「まあ、一応お嬢様学校だからな。私のような淑女が通っている学校だから、浮世離れしたところがあるのは確かだ」


 淑女の下りはツッコミを入れるのを悩んだが、私はスルーすることにした。

 お金持ちのお嬢様学校なのは分かっていたが、このクラスの土地を所有者は私がいた異世界なら名声の高い貴族や領主の類だろう。

 奈緒の後に付いていく形で歩き出すと、私一人なら絶対迷子になりそうだ。

 教員が使用する裏手側から校舎へ入ると、学校関係者らしき人物が案内人として私達を出迎えてくれた。


「こちらの履物をどうぞ」


 私達は言われた通り、用意されたスリッパに私達は履き替える。

 校内は土足厳禁で、今回はスリッパであるがこの独特な学校の雰囲気に私は昔を思い出していた。


(上履きに履き替えて自分の教室へ行ってたんだよな)


 小中高はこれが当たり前の生活だった。

 異世界でも学校は存在していたが、それはあくまで人間の世界での話。

 ダークエルフには縁のない世界だった。

 案内人に従って私達は廊下を歩いて行くと、最奥にある理事長室のプレートが掲げられた一室で立ち止まる。

 案内人が軽くノックすると、扉を開けて私達を中へ招き入れる。


「やあ、いらっしゃい」


 理事長室には修道服に身を包んだ色白の若い外国人の女性の姿があった。

 どうやら、書類に目を通している最中だったようだ。

 案内人は一礼して理事長室を去ると、奈緒は遠慮なく来客用のテーブル席に座って見せた。

 奈緒に軽く手招きされて、私も彼女に倣って隣に座って見せると女性も向かい合うように席へ着いた。


「久しぶりだね。最後に会ったのは……去年の年末頃だったかな?」


「正確にはあんたが主催した忘年会だな」


「うんうん、そうだった。私は友達が少ないから人が集う催しを一度やって見たかったのよね」


「理事長って立場なら、お偉いさんのパーティーとかに招待されるだろうに」


「それは仕事だからねぇ。プライベートで友人と過ごす催しがやりたかったの」


 奈緒と女性はそんな会話を繰り広げると、どうやら二人は顔見知りの親友みたいだ。

 奈緒が聖カトメイル学園出身とはいえ、ここの主である理事長とこんなに親しい間柄なのは少々意外であった。

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