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第13話 私が女子高に

 落ち着きを取り戻した私はソファーに腰掛けると、奈緒と向かい合って今後のことについて話し合う。


「もう大丈夫なのか?」


「ええ、みっともない姿を晒してすみません」


「別にいいさ。大人になったら泣きたくても泣けないのが辛いところだからな」


「一応、二十歳の成人なんですけどね」


「二十歳か。そうだな……まずは君の年齢について少し提案があるんだ」


 奈緒は私に書類のような物を一冊提示する。

 また昨日のように書類に署名を求めるものかと思ったが、どうやらそれとは違うようだ。


「聖カトメイル学園の案内書?」


 よく見ると制服姿の学生が映っているパンフレットで、聖カトメイル学園は琉緒が通っている高校だ。


「君をこの学園に編入させようと思う。元々、君は前世の男子高校生で時は止まったままであり、高校生としてやり直すのは悪くない選択じゃないかな?」


「ちょっと待って下さい。色々言いたいことがあり過ぎて混乱しそうですが、まずはダークエルフの私を学校に通わせるなんて……」


 私は動揺しながらパンフレットを奈緒に突き返す。

 ダークエルフは架空の存在として認識されているこの世界で、堂々と高校へ通うのは周りが騒ぎ立ててしまうだろう。


「それは問題ない。ルミスは長耳を隠す魔法が使えるし、長耳さえどうにかできれば外国人で押し通せるレベルだ」


「あっ、この世界で魔法は扱えるのですか?」


「少なくとも、ルミスは普通に行使できている」


 奈緒から魔法という言葉を耳にして、すっかり忘れていた。

 異世界では人間に扮した姿をするために長耳を隠す魔法は私も扱える。

 元の世界に戻った衝撃が大きく、琉緒と再会できたこともあって今まで魔法が扱えるか試していなかった。

 エルフのルミスが魔法を問題なく扱えるのなら、おそらく私も大丈夫だろう。


「ちょっと試して見ますね」


 私は意識を両耳に集中させて魔法を行使すると、長耳は次第に変化して人間と変わらない姿になった。


「おお! ルミスの魔法も何度か目にしているが、やはり凄いな」


 奈緒は驚嘆の声を上げると、私の両耳に触れながら感心してしまう。

 人間の両耳になっても、見た目だけが変化しているだけなので相変わらず感度は元のままだ。


「あう……あまり耳は触らないで下さい」


「おっと、これは失敬。ルミスも変化した耳を触られたら今の君と同じような表情をしていたな」


 情けない声を上げる私に奈緒はゆっくり手を引っ込める。

 耳の感度だけは魔法ではどうすることもできず、誰かに触れられたりしたら今のようになってしまう。


「ちなみに魔法の持続効果はどれくらいだ?」


「約一日ですね。これは消費魔力も少ないですし、毎日かけ直す分には問題ありませんよ」


「うん、それなら私生活を送るのに問題ないな。学校へ通うのも可能だろう」


 たしかに私生活の面はクリアできたが、次に言いたいことは学校についてだ。

 奈緒が提示したパンフレットの聖カトメイル学園は女子高だ。


「その案内書は琉緒ちゃんが通っている女子高ですよ。私をそこに通わせるつもりですか?」


「三崎信也なら不可能だが、クシャ・アルリーナなら可能だよ。そのデカい胸と魅力的な容姿があれば女子高生で全然いけるだろう。年齢は琉緒と同じ十七歳の設定にして三歳はサバを読んでしまうが、これもまあ誤差の範囲だな」


 どうやら、奈緒は琉緒の通う聖カトメイル学園へ編入させる気が満々のようだ。

 一応、性別は女性で身体的な問題はクリアしている。

 問題なのは頭の中身が事故当時の男子高校生のままなのだ。

 琉緒と公園で再会した時も、当時の感覚が蘇って琉緒を一人の女性として意識してしまったぐらいだ。


「それはちょっと……倫理的にまずくないですか? 琉緒ちゃんも私が女子校に通うのは躊躇うと思います」


「いや、むしろ一緒にお揃いの制服で登校できるから嬉しがってたぞ」


 どうやら、琉緒には編入の件を既に話しているようだ。

 琉緒に蔑んだ目で見られるかと思ったが、そんなことはなかった。

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