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第12話 救いの女神

 楽しい時間はあっという間に過ぎて、琉緒はそろそろ学校へ向かわなければいけない時間に迫っていた。


「ほらほら、早く学校へ行きな」


 奈緒が琉緒の背中を押して催促すると、琉緒は名残惜しそうにこちらを窺う。


「遅刻はよくないし、俺はここにいるからいつでも会えるよ」


 私は琉緒の頭を優しく撫でると、琉緒は微かに頷いて笑顔を見せてくれた。


「学校が終わったら、また来るからね!」


 元気に駆け足で探偵事務所を後にする琉緒を見送ると、自然とこちらも元気が湧いて来る。

 明るくて素直な性格の琉緒に惹かれ、勇気を振り絞って告白する段取りであったが交通事故に遭ってしまい三崎信也の人生は幕を閉じた。

 ダークエルフのクシャ・アルリーナとして琉緒と再会できただけでも奇跡的であり、あの時に叶わなかった告白をするチャンスが訪れた。


「本当に仲が良いんだな。まるで本当に恋人同士みたいだ」


 羨ましそうに奈緒が語り掛けると、淹れ立てのコーヒーを口にしながら微笑みかける。

 半年前までなら男女の恋人同士と呼ばれても差し支えなかったが、現状はそうではない。


「……奈緒さんは種族が違う上に女同士の恋人って成立すると思いますか?」


 唐突に心の奥底に閉じ込めていた疑問を奈緒にぶつけてしまった。

 窓辺に映る胸の膨らみと長耳が特徴的なダークエルフが不安に押し潰されそうになっている。

 先程、琉緒からもらった元気も完全に影を潜めてしまう。


「私は恋愛について素人だから参考にはならんだろうが、恋人になるかどうかはお互いの気持ち次第ではないのかな。琉緒は見ての通り、昔から直情型でこうと決めたら突き進むタイプの子だ。君を失った半年間はこの世の終わりを彷彿とさせる絶望感が圧し掛かっていたし、姉である私にはどうすることもできなかった。あんな元気な姿の琉緒を再び見れて私は君に感謝をしているぐらいなんだよ」


 奈緒は私の肩に手を添えると、感情が入り乱れた私の気持ちに寄り添ってくれる。

 そんな奈緒に私は彼女の胸に飛び込んで甘えるようにして泣き崩れてしまった。


「大丈夫、君と琉緒は止まっていた時間が再び動き出した。これからゆっくりと半年間の空白を埋めていけばいい」


「うう……今の私にそれができると思いますか?」


「できるさ。ダークエルフや女同士だろうが関係ないよ」


 奈緒の温かい言葉は私の冷え切った心の氷を解かしてくれた。

 誰にも相談できなかった想いを秘めていただけに、奈緒という理解者の存在はとてつもなく大きい。

 性格やタイプは全然違うが、この姉妹は私にとって救いの女神そのものだった。

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