2話 火を操る者
さて、依頼者から聞いた情報によるとターゲットの女性はこの一軒家にずっと閉じこもっているらしいな。
ここは依頼者の家らしい。話を聞いた限り、自分の家族がこの家の中で殺されたようだ。
僕は依頼者から借りた家の合鍵を使って玄関の扉を開けた。
「焦げ臭いな・・・。」
焦げ臭いと言えば、依頼者がおかしなことを言っていたな。なんでも依頼者が言うにターゲットの女性は炎を投げて家族を焼き殺したらしい。
今考えてもおかしいな。まぁ、家族が殺されて気でも狂っていたのだろう。僕は「炎を投げた」の炎の部分は火炎瓶やガソリンなど、そのようなものなのだろうと考えて家に乗り込んだ。
経験上、こういう建物の中に潜んでいる場合、ターゲットはどこかに隠れて奇襲するものだ。もし隠れていないのなら、そいつはよっぽど自分に腕に自信がある奴か、もしくはただのバカだ。
とりあえず、リビングから見ていくとしよう。
ガチャ
リビングの扉を開くと、とてつもない悪臭が鼻を襲った。これは…血の匂いだ。悪臭といっても、仕事柄嗅ぎなれている匂いなのですぐに冷静さを取り戻した。
冷静さを取り戻した後、室内を確認するために入室した。少しあたりを見渡して室内の状況を確認した。
「2LDKか、中々いい家に住んでいるねぇ~。」
いやホントにいい家に住んでいるな。僕は基本、職場の店で寝ているのでこのような家に憧れていた。ただ・・・
「壁が焼け焦げているな。」
依頼主が言っていた、「炎を投げてきた。」というのは流石に信じられないが、炎を使ったというのは本当のようだ。そして、この部屋の壁が焼け焦げているということは、この部屋で事件があったのだろう。
しかし、おかしいな辺りを見渡した限り燃やすために使う道具が見当たらない。もし、火炎瓶を使ったのならガラスの破片があるだろうし、ガソリン油も散らかっているようには見えない。
『うーん、おかしいな。持ち運ぶことができ、かつ投げられるものなんか限られている。マッチやライターなんかでは、人は殺せないだろう。だとしたら、何を使ったんだ?』
そう思いつつもとりあえず部屋を見てまわろと思い、キッチンの方に行ってみた。
『キッチンには様々な凶器がある。もしかしたら、そこの何かを組み合わせて使って、火炎瓶のようなものを作ったのかもしれないな。』
そう思ってキッチンに向かってみたが、キッチンが荒れている様子はなかった。
『何かがおかしい。まさか本当に炎そのものを投げたとでもいうのか?いやそんなことあり得るわけがない。』
そんなことを思っていると突然背後から何かが飛びかかってくる気配がした。僕はしゃがみ、相手の攻撃を回避した後、すぐに後ろに後退、リビングに向かった。どうやら攻撃したのは女性のようだ。しかし...
『見間違いか?彼女の手が燃えていたように見えたのは?』
そんなことはあるわけないかと思い、すぐに体制を立て直した。
「写真と顔が一致しているな。この家の家族を殺したのはお前だな。」
「あら、だったら何なのかしら?」
「悪いけど仕事なんでね、あんたを殺させてもらうよ。」
「ふふふ…アハハハハハハハハハハ‼‼‼ あぁ~~おっかしいッ!」
「・・・ギャグを言ったつもりはないんだが。」
「だって~~、あたしを殺すとか絶対に無理なんだもん♪」
「大した自信だね。けど、油断は良くないと思うよ。」
「ん~、あんたは殺し屋とかそういう類の人でしょ?だったら依頼主にあたしがどんな”殺し方”をしていたのか聞いたんじゃないの~?」
「炎を投げてくるとか言ってたな。だが、そんなことあるわけがない。」
「アハハ! やっぱりあんたってホントに馬鹿ねッ!」
そう言って彼女は右手を上に掲げた。すると彼女の右手から…炎が生まれた。それもバスケットボール位の大きさだ。
僕は目の前のありえないような状況に思わず、目を疑った。いや、普通あり得るか?何も持っていない手から炎が出るとか普通ないだろう⁉
「炎っていいわよねぇ~。ナイフとかと違ってすぐ絶命させるわけじゃないから、その分断末魔を聞けるのよねぇ~。」
彼女は自分の手から出ている炎を見つめながらうっとりとしている。
こういう狂っている奴は何度も見てきて慣れたつもりだが、あり得ない状況でもあるせいで久しぶりに気持ち悪いと心の底から思った。
「この家の家族は呆気な~く絶命しちゃったけど、あなたはどれだけ耐えてくれるのかしら♥」
そう言って彼女は手を振りかざして、
「せいぜい目一杯、足掻いて頂戴ね♬」
言い終わると同時に彼女は、呆然と立ち尽くしている僕に向かって、炎の玉を投げてくるのであった。
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