表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
91/326

89話:探索者ギルド

 俺は大地神の大陸から王国の王都に来ていた。

 言い訳はさっき盛大にお姫さま抱えてたヴェノスだ。

 ただし真の目的はダンジョンにある。


(この国にあるダンジョンの名前はノーライフファクトリー。あれが本当にゲームのだとすると、ふっふっふ)


 ゲームではクリア済みのダンジョン、つまりノーリスクでゲーム知識を検証できる場所になる。

 というのもゲーム内での分類としては初級のダンジョンでエネミーも作りもごく単純。

 大地神の大陸にいるエネミーのような騙し要素などない。

 しかもノーライフ系と呼ばれるダンジョン群の一つであり、考察も盛んに行われていてダンジョン攻略も最短ルートが確立していた。


 特徴としては名前のとおり非生物のエネミーが出るダンジョンで、ファクトリーはゴーレムしか出ない。

 一種しか出てこないダンジョンということで、初級も初級。


(対処さえしていれば死なないし、レベルのごり押しでサクサク行けるんだよな)


 完全物理で硬かったり打撃が強かったりはするが、わかりやすく対策を立てやすいエネミーでもある。


 そう、力こそパワーだ。


(ただ問題は、入るまでだよな)


 もちろんダンジョンの入り方は予習済みだ。

 ゲームでは入り方なんてなかった。

 これはこの世界特有の条件、それは、探索者ギルドに加入することだ。


 この世界独自の決まりで、王国だけじゃなく他の国もダンジョンに入るには探索者ギルドに入らなければならない。


「考えてみれば当たり前だな。ダンジョンは資源。管理されてるんだ」


 管理は探索者ギルドに限ったことではないし、国がダンジョンの出入りを規制していることもあるのだとか。


 そもそも探索者ギルドはダンジョン攻略のための組織。

 最初にダンジョンの危険と有用性を発見した創始者が組織した。


(たぶんプレイヤーだよな)


 まだダンジョンが資源的価値よりも危険性が高い内に所有を明言していたことは歴史的な逸話として残っている。

 つまり最初から価値を知ってたのだ。


 だいたいギルドとかってところからぽい。

 ゲームでは冒険者ギルドがあり、クエスト受注とイベント掲示の場所だった。


 ゲームでは町や国を運営できるけれど、ギルドはゲームの製作側が運営している。

 その分どの国でもどんな場所でも必ずあったセーブポイントでもあった。


(スタファたちからなんとか聞き出したところによると、ダンジョンは最初危険で誰も欲しがらなかった。それが今では資源を独占して探索者という武力も保持する組織の創始者だ)


 上手くやったものだ。

 生きてる内はきっと左うちわを夢見たことだろう。


 けれどもう死んでいる。

 というか千年前の人物だ。


(今の探索者ギルドの機構を子や孫に伝えて、さらに後の人間たちが今の形にしたらしい。大変な事業だ)


 初代ギルドマスターが生きていた時には所有できたダンジョンは一つだけ。

 探索者も百人以下。

 それが時と共に成長して今や唯一の国を股にかけたインターナショナル企業だ。


 何処の都市にもギルドの支部があり、今ではダンジョンに限らずエネミー相手の討伐になくてはならない存在。

 魔物専用の駆除業者や猟友会的に、国からもお呼びがかかるという。


 そうして腕を上げた人間がダンジョンへ挑戦して、希少なアーティファクトを手に入れる。

 アーティファクトを売り払って富を得るもよし、アーティファクトの力でより上を目指すも良し。


「命を懸ける価値が、あるか?」


 疑問に思うのは俺の主観だ。

 ゲームだったらありだが、どうも現実に一つしかない命を賭けてまでと思ってしまう。


 ただノーライフファクトリーなら一定の価値はあるんだろう。


(まさかゲームでの理論が実行されてるとはな)


 ゲームでは武器を作るにもアイテムを作るにもオーブというアイテムが必要になる。

 魔物から取れる動力源的な設定の物で、魔石と呼ばれるドロップアイテムを加工して作るのだ。


 その魔石も敵のレベルや種族でとれる種類が変わって来る。

 ノーライフファクトリーのゴーレムは必ず下級から上級どれかの魔石が取れる設定だ。

 たいていが下級なのはゲームではよくあることだが。


(下級も集めればオーブにできるし、錬金術師が集めて一つにすると特殊素材にはなったからな。ノーライフファクトリーは素材狩りのために定期的に呼びかけがあった)


 どうやらこの世界にもそれがあるようだ。

 オーブを使っての特殊な武器やアイテムの製造が行われており、国が買い上げる特殊技術扱いなのだ。


 この特殊技術とやらが、ジョブスキルでゲームでもできていたオーブ作りかはわからない。

 今、彭娘が調査中だ。

 王宮だと畑違いすぎて難しいとか。

 どう違うのかはわからないから、時を待て、焦るな、役割を果たせと言い聞かせておいた。


(スタファたちの予想だと、帝国が公国より積極的に王国攻めてるのはダンジョン狙いの可能性とか言ってたし)


 だからこそ今しかなかった。


 NPCたちは何やら策謀で忙しい。

 そんな中、都合よくヴェノスが王国へ行くと言ったんだ。

 この機を逃せば、俺はゲームにあったダンジョンを自ら楽しむ機会なんて二度とない。


 俺は一人、手袋に覆われた手を握り締める。


「それに、こうして観光できてるしな」


 王都の町並みは共和国と違って景観がいい。

 やはり光の届かない裏道はあるものの、高い石造りの建物に煙突、馬車道があり、これぞヨーロッパの町並みといった感じだ。


 ただ気になることもある。


「なんか、ゲームのデフォルトっぽい?」


 完全に同じということはない。

 ただ、目抜き通りから三叉になる道に行くと、目の前に探索者ギルドがそびえている。


 この構図はゲームの冒険者ギルドをほうふつとさせるんだ。

 いや、ダンジョンに期待持ちすぎてるだけか?

 なんでもゲームに結び付けるのもな。


 俺はそう自分に言い聞かせて探索者ギルドの開かれた扉の中へと踏み込む。


(役所…………いや、病院か。それともいっそ、大学?)


 広い空間には互い違いに並べられた椅子と机でキャンパスっぽい。

 けれど受付カウンターらしきものがあり役所っぽい。

 ただ奥に進む廊下とその先に、別の待合や扉の数々を見る限り病院にも似ていた。


 しかしここにいるのは学生でもなければ一般人でもない。

 命がけで一獲千金を狙う探索者たちだ。


 その鋭い眼光が見慣れない俺に集まる。

 あからさまに値踏みする者もいれば、すぐに目を逸らす者もいた。


「こんにちは。こちらでご案内を察せていただいております」


 出入り口脇のカウンターから声がかけられる。

 そこには制服を着た女性が笑顔で俺を呼んでいた。


(これも初代のプレイヤーが決めたのか?)


 スーツっぽい仕立てにタイトスカートは他では見ない恰好だ。


「拝見しましたところ、神官か錬金術師ジョブの薬師の方とお見受けしますが」

「そう見えるか?」


 俺は思わず聞き返す。


 今俺が着ている装備はペストマスクというハロウィンの仮装イベントであった衣装だ。


 鳥のくちばしのようなマスクは眼鏡と一体化しており、肩まで覆うほっかむりを頭から被り、その上から山高帽を乗せている。

 手には肘までの手袋をはめ、服は足元まで隠すローブを纏い、足元はごついブーツを履いていた。


(まさかこれが在庫品みたいな扱いでショップにあるなんて思わないよな)


 このペストマスク装備は大地神の大陸のショップにあったものだ。

 資源の確認の中で見つけ、店の表には出されていないアイテムという存在を知った。

 店の者に聞くとかつて売っていたと答える。


 ゲームの時にはショップという機能に一律で期間限定アイテムを設定していた。

 そして期間が終われば取り下げ、その取り下げたアイテムのデータが残り異世界で現実のものになったのではないかと思っている。


 それが在庫として店の裏にあるという状態だったのではないか。


(このペストマスクの一番の利点は一揃いなところだ。言ってしまえばこういう形の着ぐるみ。つまり、本来巨体の俺が着ても、中肉中背に見える!)


 どんなに縮めても長身になるのが困りどころであり、顔を隠したり人間のふりをするのに苦労した点だった。


 だがこの世界にもペストマスクはあり、どうやらプレイヤーが広めたらしいこともわかった。

 受付嬢が言ったとおりジョブの専用装備で、かつていたプレイヤーも着ていたんだろう。


「ギルド証の再発行を願いたい。だが、実は私は共和国で登録をしていてね。持ち出すことが適わなかったんだ。この場合、どういう手続きになるだろう?」


 俺が用意していた言い訳を告げた途端、受付嬢は同情の目を向ける。


「ただいま共和国の探索者ギルドとは連絡が取れず。ギルドからの紹介状でもあれば」

「あぁ、知っていれば王都を出る前に、いや、元王都か。ともかく用意したんだが」

「まぁ、まだ共和国のギルドは機能をしていたのですか?」


 しまった。余計なことを言ってしまった。


「私がいた時には、少ないながら人は残っていたんだ。今はどうかわからないな」


 その場しのぎの言い訳に、どうやら受付嬢は納得する様子。

 俺はなんとかギルド証発行の手続きについて怪しまれず話を聞くことに成功した。


毎日更新

次回:ペストマスクの探索者

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ