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私は結界内の宿屋に閉じ込められた生活をしている。
ある冒険者パーティーに臨時にポーターとしてギルドの依頼に参加した。
森の生態調査と森の中の洞窟にあるダンジョンへ行く手前の野営地の確認だった。
有ればその野営地付近で取れる珍しい薬草の採取も依頼されていた。
あまり知らないパーティーだったがギルドも依頼を急いでいたのもあり、その場にいた私が追加で参加することになった。
私は彼等を知らなさすぎた。森の中に入ると探している野営地にたどり着く前に森の中がダンジョン化したかのように魔物が増えていたことに気付けてなかった。
増えた魔物に対応できないパーティーメンバー達と逃げる時に怪我をした私は彼等に置いて行かれた。
彼等が逃げて行くのを見て思った。
こんな理不尽なことがあったのだろうか。
否、人としてあってはいけないはず。
前にもこんな感じの思いをどこかでした気がした。
幸いにも荷物にポーションが残っていたのと森の浅い方だったので私は自力で森を出て近くの無人の村に入った。
廃村になって時間が経っていたが村の中でもまともな建物である宿屋で休む事にした。
宿屋に魔物避けの結界石が置いてあったのとポーターの荷物の中に結界石が入っていたのでこの宿屋を拠点にできるよう結界石を設置した。
それなりに広さがある宿屋で裏には井戸と畑があってこれが使うことができた。道具入れに荷物が多く残っていたことから避難して戻るつもりで置いていったのかもしれない。
採取で採った薬草を植えつつ植えたまま放置されていた畑の野菜を収穫して食べることができたのがよかった。
私は宿屋を生活できるように整えながら結界石に魔力を注ぎ込み安全な拠点を作り、自作の弱いポーションを作り置きしてスキルが上がっていくように努力する日々を過ごした。
そんなある日のこと宿屋の二階にある客室を掃除していると外が騒がしくて窓から見ると冒険者パーティーが戦っているのが見えた。
私は慌てて外へ出て行き結界の境界の所から5匹のオークと戦っている冒険者パーティーに声を掛けた。
「手助けが必要ですか。必要ならできる事をしますよ。後でいいので見合う対価を要求しますが大丈夫ですか。」
疲れから座り込みながら魔法を使う少女。少女の足もとには倒れた冒険者が2人。
距離を保ち前で戦い続ける剣士の男の人が2人で5人のパーティーのようだ。
彼等はこちらを見ずに攻撃の手を緩めないまま言った。
「頼む。」
「お願い。」
「そちらの言い値で対価を払う。」
「数メートル後ろに結界が張ってあります。ゆっくりと後ろに下がってください。販売できない低ランクのですがポーションもあります。」
と言って私は魔法使いの女の子の前にポーションを並べるた。
彼女の近くの女性で倒れた人を結界の中に引きずり入れた。
少しづつ剣士の人達も下がって来てポーションを飲むと1人の剣士は膝をつき蹲み込んだ。
疲れがピークだったのかもしれない。
「もう少し頑張って。みんな結界の中に入って。結界に入れば大丈夫だから。」
私はそう言って自作の火炎瓶もどきをオーク達に投げつけて魔法を使った。
「ファイヤーボール。」
「ファイヤーボール。」
「ファイヤーボール。」
火炎瓶を有るだけ投げてオーク達の数を減らす事ができて少しは逃げたようだった。退治できたオークを引きずり私も結界内に入ると剣士の人と魔法使いの少女も倒れていた。
もう1人の剣士の男の人が倒れた人を結界に入れてくれたようだ。その人とオークの処理と彼の仲間達の外傷の確認と傷の洗浄や治療をする。その時に冒険者ギルドのタグを見ておいてから宿屋を案内した。
「ありがとう。助かった。この宿屋の女将さんですか。」
剣士の人に問われたが私はすぐには答えられなかった。
「皆さんお疲れでしょう。明日にでも詳しく話し合いましょう。」
と言って私は問題を先送りにして軽食やリネン用品を渡して部屋の案内をしてから対応を終わらせた。