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ハロー新世界  作者: ももたろ
1/1

1話


その日僕は




親友を殺した。




少し汗ばんだ肌に張り付くワイシャツと、

顔尾を出して1時間くらいの眠そうな太陽の日差しに、

まだ眠気の覚めない僕。

僕はいつものように使い古したエナメルバッグを肩に、

イヤホンを耳にぶら下げる。

まだ涼しいと感じられる気温の午前6時、

僕は3年目のママチャリで学校に向かう。

 いつも朝は車の通りが少ないので車道を走る。

そこに大した意味はなくてさ、

別に歩道を走ってもいいんだけどね。

車道の方がちょっと開放感があって気分がいいんだ。

まあその辺は目をつぶっておくれよ。

だってそんなこといちいち気にしてたら

息が苦しくなっちゃうでショ?

 耳に引っ掛けたイヤホンからは

最近知った3ピースバンドも曲が流れている。

最近のお気に入りなんだ。

気持ちが前向きになるっていうかさ、

夏に合うんだよね。単純に。

 30分ほど自転車をこぐといつもの交差点に出る。

定期的に警察官が交通指導してるから注意が必要なんだけど、

どうやら今日ははずれの日のようだ。

ハンドルから手を放し素早くイヤホンを外しポケットにねじ込む。

後で絡まってほどくの大変なんだけど、

そんなことは言ってられない。

だって交通マナーを守ってないのは僕なんだから。

怒られるのはごめんだ。

 「君イヤホンしないでね~」

 「あっ、はい。スミマセン。」

怒られてしまった。今日はついてないなァ。


数時間後、僕は机に突っ伏して寝ていた。

いや、ジリジリと照り付ける太陽にさらされず

冷房の効いた教室という名のサンクチュアリによって

寝かされていたというべきだろうか。

冗談もほどほどに

僕はまどろみの中に飲まれていくのであった。

「いつまで寝てるんだ起きろぉぉぉぉぉぉぉ!」

あぁ...飲まれませんでした。

「次は教室移動だぞ。いつまで寝てるんだ?」

声をかけてきたのは久須美雄二。

友人からは頭文字をとってキューと呼ばれている。

「うるさいな...なんだキューか、ごめん。ありがとう。」

「おいおい、怒るのか、謝るのか、感謝するのかどれかにしてくれよ?」

「じゃ、怒っとく。ふざけんな筋肉バカ。」

「うっせ、早くいくぞ。」

「はいよ。ありがと。」

休み時間も終わりに近く教室には誰もいない。

僕たちは駆け足で教室に向かう。


「くぁwせdrftgyふじこ」

授業開始から5分、

何を言っているのかよく聞き取れない

おじいちゃん先生の化学の授業の最中、

僕は絶望と対面していた。

教科書がない。

ノートもない。

これはとてもいけないことである。

どのくらいいけないことかというと、

テストを受けるのに紙とペンがないような状態である。

何はともあれ僕は絶望と真摯に向き合った結果、

まどろみに飲まれることにした。

「あれ?

今日の授業今期の期末テストで出すって言ってたけど大丈夫?」

飲まれませんでした。

話しかけてきたのは隣の席の小林唯。

なぜか小中とすべて同じクラスだった腐れ縁だ。

「あー、大丈夫。たぶん。」

「大丈夫じゃないでしょ!

あんた入学してまだ半年もたってないのに

この前のテスト赤点とったんでしょ!」

「あれだから、本気出してないだけだから。」

「冗談はいいから、教科書見せてあげるから起きて。」

「あ、ありがとうございマス...。」

「あんたノートもないの?やばすぎでしょ...。」

「あれだから、ほんきだしt

「はいはい、ルーズリーフあげるから。後でジュースね。」

「わかりました...。」

この瞬間を青春というのだろうか。

なんにせよ高校生らしい。

病気で中学生の時のほとんどを病室で過ごした僕は、

高校生になったという実感を改めてかみしめるのであった。


しかし、運命は残酷でその瞬間は唐突に訪れた。


ドォォォン!


爆発音が響く。


その日、

僕の平凡な日常は崩れ去り、

悪夢のような日々が始まった。


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