pre First Battle
思い出しました!
研修最終日、会場に着くと社長が待ち構えていた。
「村越、お前もう大丈夫っぽいから、今からセイヴオウル本社に行くぞ!出張だ。」
「は!?」
「飛行機、予約してあるから。ほい、これ予約票な。」
「は?……は!?」
困惑していると、社長の後ろから鈴木さんが出てきた。
「いつもの社長の思いつきです。私も同行します。オバトラに入社した以上は慣れてください。」
空港へは鈴木さんの安全運転する車で、すんなり到着した。途中で社長が『美和と行くはずだったのに……』とかなんとか愚痴っていたけど気にしない。
発券機でチケットを発券し、社長と鈴木さんに続いて搭乗ゲートをくぐる。社長は美和さんの自慢話を止めどなく放っている。私は興味深く聞いていたけど、鈴木さんは心から面倒くさそうに「はいはい」と相づちを打っていた。
着席する頃には自慢話も底をついたのか、私に質問を振ってきた。
「ところで村越って倉敷の彼氏と会ったことある?」
「いえ、無いです。サッカー部の人ですよね。」
「そうそう。この前ちょっと倉敷と話したんだけどウチの会社に欲しいんだわ。なんでもネットワーク関係に詳しい体育会系とかで、ちょうど足りてない人材なんだよ。」
「聞いてみましょうか?研修中なので返事は遅くなると思いますが?」
「おう!頼んだ」
もそもそとスマホを取り出し、ラインで「社長がキハちゃんの彼氏さん雇いたいって!」と送りつける。案の定、既読はつかなかった。
ふわっ
「離陸しました!離陸しましたよねっ!!」
「あぁ、離陸したな。って村越は飛行機乗るの初めてなのか?」
「修学旅行で乗ったっきりです。空、飛んでる!」
「あー。席変わろうか?」
「良いんですか!?是非お願いします!」
社長は窓際の特等席を譲ってくれた。あ、シートベルトのランプは消えていました。
「でだ。東堂常務とのアポなんだけど、午後からなんだわ。村越は午前中にどっか行きたいところとか有るか?」
「ディズニーランド!ディズニーシーも行きたいです!!」
「いや、時間的に無理だ。というかサワが青筋立ててるぞ」
「一応会社の経費での出張なので、あまり遊びに特化した観光地は避けてください」
「はい」
「スカイツリーくらいでしたら大丈夫ですよ」
「それにしましょう!スカイツリー饅頭あるかなぁ?」
「あるといいですね」
「ところで社長、突然真面目な話になるのですが、今年の新入社員、どう考えても多すぎますよね?理由を伺っても構いませんか?」
「おぅ。秘密だ」
くっ……まだ引っ張るパターンですか!?
空港を出ると、そこは大都会だった。
「ところで、移動はどうするんですか?レンタカー?」
「いや、こっちの社員が社用車回してくれる手はずになってるんだが……来てないな」
「え!?オバトラって東京にも支社とかあるんですか!?」
「あぁ、ちっさい事務所だけだけどな。ちょっと連絡してみるわ」
社長は私達から少し離れてスマホを取り出した。
「鈴木さん!東京支社、行ってみたいです!」
「やめておいたほうがいいですよ。あれはまぁ、何と言うか……」
「そうですか。分かりました。切り替えてスカイツリー観光楽しみましょう」
「言いにくいんだけどな……社用車、事故って来られないんだと。どうする?経理」
「レンタカーですね。経費で落とせます」
鈴木さんはキッパリと言い切った。
「で、小野さん無事なんですか?」
「ああ。怪我はないらしい。相手も無傷だとよ」
「では、レンタカー借りてきますね。あ、村越さんに手続きしてもらいましょうか。レンタカー、借りた事無いですよね?」
「了解しました。村越白、レンタカーを借りてまいります!」
「こんにちは!レンタカー借りたいんですが」
「はい。ありがとうございます。こちらにご記入をお願いします。免許証のコピーを取らせていただきますね」
免許証……要るんだ。
「車種は……レクサスでいいですね?」
笑顔で振り向くと、社長と鈴木さんは顔を引き攣らせていた。
「村越さんが言うと冗談になっていません」
「前科があるしな」
信用されてないなぁ。
「プリウスだ」
「プリウスですね」
綺麗にハモった。
駐車場に案内され、運転席に乗り込もうとすると鈴木さんに肩を叩かれた。
「村越さんは助手席です」
えーー!?首都高バトルしたかったのに!!
「何度も言うようですが、遊びに来てる訳ではありません」
鈴木さんの無慈悲な勧告が下された。
私、小説書いていたのでした!




