鈴木さんの恋
机が一つに纏まり、料理が並べられる。
ーーパンパンっーー
鈴木さんが二度、手を打って話し始めた。
「こちらはセイブオウル、来月の新商品になります。本部に無理を言って確保してもらいました。まだ味の微調整はできますので、若い皆さんの忌憚のない意見を聞かせてください」
「いっただっきま〜すっ♪」
タクローくんが心の底から嬉しそうに叫ぶ。
うんうん。体育会系だねぇ。
キハちゃんと蒸し鶏の入ったサラダを突いていると、鈴木さんに小さく声を掛けられた。
「そこの彼氏持ちーズさん、折り入って相談したい事があるのですが……」
「はい!!」「はい!?」
私とキハちゃんがきれいにハモる。
「実は私、齢を三十と幾枚か重ねておりますが……その……殿方と”お付き合い”なるものをした経験がありません」
「「ふむふむ」」
「そこで経験豊富な先輩方に、このあとの流れと言いますか、具体的に何をすれば良いかを御教授頂ければ、と思う所存でございます」
「まず!」
キハちゃんが叫ぶ。
「普通に喋ってください!」
そうそう。まずそこですよね。
「はい」
鈴木さんが頷いた。
「では!」
キハちゃんの恋愛講座開講〜。(パフパフ)
「経験豊富な、ぐみちゃんからどうぞ!!」
えーーー!?ひどい!!
仕方ない。なんかそれらしい事言っておこう。
「そもそもの話なのですが、鈴木さんと陽斗くんは付き合っているのですか?さっきのやり取りでは交際成立と思えなかったのですが」
「うぐっ……」
鈴木さんが苦しげに呻いた。
半分涙目の鈴木さんは仕方なさそうに、社長と歓談している陽斗くんの方に歩いていった。
「あの二人、うまく行くと思う?」
キハちゃんに尋ねる。
「告った時の鈴木さんだったら無理だろうね。さっきの鈴木さんなら陽斗くん次第かなぁ?」
「私もそう思う」
「ぶひゃひゃひゃひゃひゃ!」
向こうで社長の大爆笑が聞こえる。
ウインナーの詰め合わせを取って戻って来ると、鈴木さんも戻って来た。満面の笑みで。
「正式にお付き合いすることになりました♪で、ぐみ先生、さっきの続きなのですが!」
「えーと……。私の経験は多分参考にならないので、キハ先生の方から!」
「私、彼氏が出来て10日くらいしか経っていないのでよくわかりません。デートだって、まだ3回しかしてないし……」
え?そなの?私先輩!?
「私も1ヶ月くらいしか経っていないのでよく分からないです。デートとか重ねて、お互い理解を深めればいいと思います」
恋愛初心者が3人集まっても良い考えは浮かばないと思ったのか、鈴木さんは、
「頑張ってみます。ありがとう」
と言い残し、陽斗くんの方に再び向かった。
「では、キハちゃんの恋バナタイム突入ですね♪」
「さっきも言ったけど、付き合ってからは3回しか会ってないから話すぐ終わっちゃうよ?」
「まず、告白したのはキハちゃんからですか?」
「ぐみちゃん、顔がおっさんになってる」
おっさんって……ヒドい。
「私から告白なんて無理だよぅ。聡くんが『就職するならもう受験勉強は言い訳に使えないぞ!』って」
「つまり、高校時代に告白は受けていたって事ですね。ズバリ!聡くんはサッカー部だったでしょう!」
「言葉選びもおっさんになっちゃったね。そう、サッカー部だよ。キーパーだったの」
話を総合すると、キハちゃんはキーパーの現彼氏が失点するのを防ぐために、ゴールポストを動かせる筋力を身に着けたらしい。
……。試合中にゴールポスト動かしちゃダメだよ!




