自己紹介(HAT(M?))
指名された男の子は、両手を上に掲げ、大きく振りながら登壇した。
「はじめまして!大森陽斗と言います。今回は自己紹介一番手という事で、大変緊張しながらココに立たせて頂いております!」
(ウソつけ)
「生まれは桜谷、育ちも桜谷、生粋の桜谷っ子でございます。サクラ繋がりで、行ってみたい観光地は葛飾柴又、趣味はアニメ鑑賞です。決してロリコンではございませんので、ご安心ください」
(?)
「ちょっとまったぁ!」
社員さんが座ってる席から"待った"が、かかる。
鈴木さんが陽斗くんの耳を引っ張り、会議室の後方に連れてきた。
「よし。次のヤツ行け!」
社長が叫ぶと、陽斗くんの隣りに座っていた大人しそうな女の子が、キョロキョロしながら登壇した。
「はじめまして。三木谷愛莉と言います。……
後ろから、鈴木さんが陽斗くんを詰問する声が聞こえる。
「シーシーか?」
「何の話ですか?シーツーは知ってますけど、アニメの話がしたいなら強引に引っ張ってこなくても、入社式終わったあとならいくらでも付き合いますよ」
よく分からない符号で会話している。
ごめんなさい愛莉ちゃん、こっちの話が気になって自己紹介頭に入ってこない。
「アニメ繋がりで『サクラ』って言ったな?サクラの名字は?」
「サクラ繋がりでアニメって言ったんですよ。アニメのサクラっていっぱいいますよ。僕がアニメに興味を持つきっかけになったサクラちゃんの名字はマソウですが」
「白か?いや、限りなく黒に近いグレーだな」
ボソリと呟き、鈴木さんの顔に笑顔が戻る。
「お父さんはアニメ好き?」
「父はアニメとかゲームは子供が遊ぶものだって思ってるみたいです」
「そう。よくわかりました。三木谷さんの自己紹介が終わったら、自己紹介の続きをどうぞ」
「はい」
陽斗くんは不服そうに会議室の前方に歩いていった。
「こんな感じの私ですが、彼氏になってあげてもいいよ、って言うお優しい方がいらしゃいましたら、このあとの懇親会または懇親会終了後にでも是非声をかけてください。ご清聴ありがとうございました」
愛莉ちゃんがペコリと頭を下げ、小さな拍手が起こる。
(自己紹介で彼氏募集してたの?こっち聞いとけばよかった。)
愛莉ちゃんを追い立てるように陽斗くんが登壇する。
「三木谷さん、ありがとうございました。そして、皆さま、お待たせ致しました!ロリコン疑惑のため、鈴木女史より取り調べを受けておりました大森陽斗が再び舞い戻って参りました。自己紹介の続きを再開させていただきます」
どこから取り出したのか、ペットボトルに入った水を飲み、深呼吸して続ける。
「好きなアニメは"苺マシュマロ”、好きなゲームは”好きな物は好きなんだから仕方がない”です」
ふと鈴木さんに目をやると、深くうなだれている。(あ、あきらめた(笑))
「……と、言うことで、俺も彼女募集中です。この自己紹介にドン引きしていない方でお願いします」
陽斗くんは深々とお辞儀をして降壇しようとした所を、小走りで近づいて行った鈴木さんに捕まった。
「偶然だけど、私も旦那様募集中なんだよね」
両手で陽斗くんの顔面を固定し、ドスの利いた声で畳み掛ける。
「会社から犯罪者出したくないから付き合え。ドン引きしてるけど」
完全に目が据わってる。
「え?」
「はいかイエスかダーで答えろ」
「だ、だー?」
「了承したと見做す」
鈴木さんは笑顔を取り戻し、自席に帰っていった。
うんうん、自社から犯罪者なんて洒落にならないよね。しかも地元テレビのトップニュースなんて事になった日には、会社潰れてもおかしくないよね。で、何の犯罪犯すと思われたんだろう、陽斗くん。
呆けている陽斗くんを見ていると、側方から社長が、
「よし!次のヤツ行けっ!」
と、声を掛けてくれた。
スポーツマンタイプの大柄な男の子が、あたりをキョロキョロと見回しながら自分を指差し、一同が大きく頷いているのを見て壇上に上がる。
「一ノ瀬拓郎です。小学校の高学年から、つい最近まで野球ばっかりしてきました。未だに自分が採用されたことが信じられません。オレ、頭悪いので」
大きくため息を吐き、辺りを見渡す。
「自己紹介なんて高校に入学した時以来なんで、何話したら良いか分かりません。ってゆうか、普通1分とかじゃないですか?自己紹介って!野球の話を延々としてていいなら3分くらい喋れますけど、そういう訳にもいかないんでしょう?」
ちらりと時計を見る。
「大体3分経ちました。最後に!大事な彼女います!恋人は募集していません」
一礼すると席に戻っていった。
次に壇上に上がったのは、見た目は真面目な生徒会長風の、爽やかな好青年だった。
「初めまして。甲賀美咲と申します」
ふんふん、声も高くて素敵♪って、女の人ぉ!?




