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7.お風呂

「こちらです」

案内してもらったのはほかほかのお湯が沸いたいわゆる大浴場みたいな場所でした。

ふむ、この世界では教会でもお湯がふんだんに使えると。



じゃああの冷たい丸洗いはなんだったんでしょうね!?

本当空腹の身には堪えましたよ。



「この教会は古い設備で…もうしわけないのですが」

なんて申し訳なさそうにしてくれているけど十分ですよ。

わたしが驚いているのはそこではありませんからね。

むしろパラダイス。

昨日までのわたしは毎日水洗いの丸洗いでした。



シャワーもあり、石鹸もシャンプーらしきものもある。

もしかすると石鹸やシャンプーあたりは過去の聖女たちが広めてくれたのかもしれませんね。

大変に有り難いです。

そうじゃなかったとしても有り難いです。


シャワーの使い方だけ教えてくれて、あとはごゆっくりと修道女Aは去って行った。

結局お名前が不明です。



脱衣所で服を脱ぎ、広いお風呂場に足を踏み入れる。

いやほんとこの世界ではお湯は貴重なんだと解釈して我慢してましたけど!!

あれ嫌がらせでしたね!?



古いタイプ、ですら何かの魔法の道具でお湯がでるんです。

ほかほかのお湯を浴びつつ髪を洗って体を洗う。

久しぶりの石鹸の香りにほっこりします。


続いて乳白色のいい香りのする湯船に浸からせていただきます。

お肌つるつるになるタイプのやつ!

もうわたしここに住みたい…




どうやらわたしが入っている間貸し切りにしてくれているようなので、名残惜しいけれどさっさと出ることにします。




脱衣所に戻るとわたしが脱いだ服の横に新しい服が置いてある。

これ着ていいんですか!?

うそ服も貸していただけましたよ!!

城のやつら一着しかくれなくてずっとこれごと洗われてたのに!!


やっぱり白のワンピースなんですけど、これが聖女の正装なんでしょうか。

下着も上下ともに白い。

子供用の…おぱんつと胸当てって感じ。

悔しいけれどこの世界基準でなくとも凹凸の少ないこの体…別に悲しくなんかない、ほんと。

ほんとだもん。



泣いてないです。



いえ一月ぶりに優しいというか人間らしい扱いを受けたので、ちょっぴり泣きました。

もちろん教会の人々を全て信用したわけではないし、本に書かれたことも鵜呑みにはしませんけれどね。


慌てて外へでると、修道女Aが待ってくれていました。

「もうよろしいのですか?」

「はい、ありがとうございました。お洋服、お借りします」

「そちらは差し上げます。その…備品ですので…」

申し訳なさそうに言ってくれるけど、全然うれしいので喜んでおきます。



「今日はお疲れでしょうからお部屋でお休みください。」

と促されたので、その言葉に従います。


部屋には水差しと本が数冊置かれていました。

「もしお暇でしたらどうぞ。この国の歴史なんかが書かれた本です」

あ、教育うけてないことバレてますねこれ。


「お気遣い感謝します」

特に触れずにお礼だけ述べておきましょう。



結局修道女Aの名前を聞きそびれましたね。

本を読む前に少し覗いてみましょう。

趣味が悪いかもしれませんが、一応です。

身の安全のためです。

油断させておいてがぶり、というタイプかもしれませんからね。



『ベネディクト様、聖女様はやはり…』

『ラウラ、気づかれてはなりませんよ。おそらく城の者は聖女様を大切にする気はない。

絶対に渡してはなりません』

一瞬わたしに隠し事してるのかと思って身構えましたが城のほうですか。

どうやらわたしのことを隠してくれるみたいです。


『それはもちろんです。ですが御勤めが…』

そうですね、わたしは旅をしなければなりません。

というか澱みとかいうやつが見えないのでどの場所にどれくらい滞在すればよいのかわかりません。

道案内くらいは欲しいですよね。

『それは聖女様にお任せしなさい。我々は彼女に何かを無理強いする権利などないのですから』

悲しそうに微笑むおじい様に少し胸がきゅっとしました。



この世界の人はわたしが異世界から同意なく連れられてきたことを知っているのです。

その上で、優しくしてくださったり明るく接したりしてくれているのですね。


その心遣いには少し報いたいと思います。

帰れない以上もうここはわたしの世界でもありますし滅びたら困ります。



さて、一応この教会の方は信じるとして、あとは城の方ですか。

そろそろ名前を忘れてしまいそうなジルなんとか殿下を視ましょう。


『逃げたとはどういうことだ!!』

お、伝わったようですね。ジルなんとか殿下が感情のままに喚いています。

格好悪いですね。

これで王族とは笑わせます。


『泉から突如姿を消したあと、馬が一頭消えておりました。

その馬は城で見つかりましたのでこちらに帰ってこられたのかと思ったのですが…』

という護衛のだれかの報告に、ひやりと冷たい笑顔を向けるのはランプレヒトさん。

いやさんとかいらないですね。ランなんとか。


『こちらへ戻ってはいませんよ。聖女を逃がすとは…どうなるかわかっていますね』

報告した人がびくっと顔を強張らせた。

そういえば殺されるとかなんとか言ってましたねえ。


『聖女を連れ戻すまで王都へ入ることは許しません。』

どうやら実質の追放で済んだようです。

死ななくてよかったですね。微塵も思っていませんけど。



その人が転がるように退室した後。

『ふう、厄介ですが便利な力を授かったようですね、殿下』

『ああ、使えるな。捕え次第隷属の魔法を使え』

どうやらお気に召す力だったようです。残念です。

隷属とは嫌な響きですね本当。人権はないんですかここ。


『心得ておりますよ』

殿下もランなんとかも顔は美しいのに性格が残念すぎてがっかりです。

傲慢と腹黒ペアですね。

近寄りたくありません。



ますます捕まるわけにはいかなくなったので、なるべく早く逃げなくては。

けれど何せ一月のパンと水生活そして運動不足により今のわたしはすごく脆弱なので、できるだけ回復はしたいですね。


わたしを本格的に探すということはきっとあの馬車は置いてくるでしょうし。

ここにたどり着くのも時間の問題でしょう、おそらく。

そのあたりの兼ね合いが難しいところです。

何せわたし逃亡なんてしたことありませんし。




しかし今日は久しぶりの揺れないベッドで眠れますし本は明日読むとしておやすみなさい。






20200118:馬の数え方は匹でも誤りではありませんが、報告する騎士の口調には合わないので頭に直しました。ご報告感謝します。

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― 新着の感想 ―
[一言] ランプレヒト?さんの恐怖に歪む顔が見たい。
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