4.街
昨日upしそこねたので、今日2話upしますのでご注意ください。
さほどかからずに街らしき門が見えてきました。
このあたりキツネくんと馬くんとはお別れですね。
「案内してくれてありがとうございます、キツネくん」
頭を撫でて休んだ湧き水の場所へ転移する。
「ここでいいでしょうか?」
と聞けば元気よく鳴いてくれたので多分オッケーですね。
次に馬くんを城へ転移します。
これは馬くんだけを飛ばしてみました。
「ありがとう」とお礼も忘れずに。
さて、わたしは初めての街に向かうのです。
さしあたっての問題は、着の身着のままのわたしが入れるかっていうところですね。
お金もありませんし。
てくてくと道を歩いていくと、徐々に人が増えてきた。
あたりから視線を感じます。
服は初日に渡された白いワンピースで、裸足なんですよね。
逃げ出すのを防止したかったのか、靴をもらっていませんでした。
うん、見様によってはとてもかわいそうかもしれません。
ただ一応その白いワンピースは上質な生地なので、孤児とかそういうふうには見えないと思います。
わたしだってすっぴんの日本人が子供にみえることくらいわかっていますよ。
まわりの人間の身長が女性でも20cmは高いし、男性に至っては30cmは離れていますし。
150cmちょっとのわたしは子供にしか見えないでしょう。
食生活のせいで少し細すぎるので余計に子供に見えてしまうかもしれませんね。
やがて辿り着いた門にいた人に、「街にはいりたいです」と話しかけてみると、「あ、あの護衛の方は!?」と何故か驚かれた。
あれ?わたしを誰かと間違えています?
「ええと…」と困って彼以外の門番を見てみたが、皆同じようにびっくりしていますね。
「護衛はいませんが…」
街に入るのに護衛が必要だったのでしょうか。
「もしや何かありましたか!?」
と聞かれてますます首を傾げる。
あ、そうですこういう時こそ千里眼。
『どどどどうして聖女様がお一人でこんなところに!!!』
らしい。
なぜわたしが聖女ってわかるのかなあ。
髪か顔立ちかどっちかですか?
「わたしだけでは街へは入れませんか?」
「滅相もない!どうぞお入りください!!」
地に頭を擦り付けそうな勢いで敬われて街へ入れてもらいました。
どうやら聖女は敬われる存在のようですね、あの一月が嘘のようです。
ええ、根に持ちますよわたしは。
さてもう少し情報が欲しいところではあります。
街中は石畳で道が整備されているので裸足でもさっきまでほどは辛くありません。
外の道は小さい石とかでいちいち怪我をするのでずっと癒してたくらいでしたから。
街を歩けばいたるところから「聖女様!」と声を掛けていただくので、よくわからないままに笑顔で手を振ります。
教会とかそういう場所があれば少しは何かわかるでしょうか。
しかし疑り深いわたしはそう簡単に話しかけたりしませんよ。
適当に道行く人の心を覗きます。
子供だとなおよしです。
『はやく教会へ戻らなくちゃ!!』
という声を30人目くらいでキャッチしたので、走る少年を呼び止めます。
急いでいるところ悪いですが。
「わたしも連れて行ってくださいな」
なるべく普通に笑ったつもりなんだけど。
「せっせっせせせせ」
と壊れたおもちゃみたいになってしまった。
どうしましょう顔が怖かったですか?
「あのう、教会へ案内してほしいだけなんですけれど」
と今度は少し弱そうな顔にしてみます。
あからさまにほっとしないで、笑顔が怖かったのかと不安になりますから!
少しへこみながらも鮮やかなエメラルドグリーンの髪の少年に続く。
やっぱり髪の色でしょうかね?
黒髪のひとなんて一人もいませんでしたし。
わたしの髪は真っ黒ではないけれど、それでもいませんね。
派手な頭ばっかりで目がちかちかします。
「お名前を聞いてもいいですか?」
「ぼくはヤン。」
「そう、ヤンくんですか。」
「聖女様のお名前はなんですか?」
「わたしはリンです。似た名前ですね」
と笑いかけると今度は嬉しそうに笑い返してくれた。
急に話しかけてびっくりさせてしまっただけだと思いたいですね。
「どうしてお一人なんですか?」
「ええと、はぐれてしまったんですよ」
適当に言い訳しておきましょう。逃げ出したとはさすがに言いづらいですし。
「えっではお一人で森を抜けてこられたんですか?」
「あ、いえ森は一人ではありませんでしたね」
キツネくんと馬くんが一緒でしたから。
あと鳥さんたち。
気付いたらいませんでしたね。
「つきました、ここが教会です」
雑談しつつ5分くらいで到着したそこは、結構立派な佇まいです。
この街の規模はわかりませんが、もしかするとかなり都会なのでしょうか。
「ありがとございます、ヤンくん」
お礼とともにエメラルドグリーンの頭を数回撫でる。
嬉しそうに笑うと彼は教会へ飛び込んでいきました。