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22.ロゼ

「あらルーリア、聖女を連れてきてくれたのね」

薔薇のような香りがするなと思ったら、そこはロゼさんの住処だったようです。


外観は見られませんでしたが、宮殿のような華々しい空間です。

精霊さんによって趣味がかなり違うようですね。


「ああ、人間たちに邪魔をされている。契約してやってくれ」

「もちろん、言われなくともそうするわ。」

にっこり美しく微笑むその女性は、宮殿の雰囲気にぴったりのドレスを着たうっとりするほど美しい人だった。


艶やかな栗色の髪がたっぷりと波打ち、宝石のような緑の瞳は理知的。

ルーリアさんが全然降ろしてくれないので、あきらめてそのままご挨拶です。

「スズ・クジョウです、よろしくお願いします」

「ちゃんと緑を身に着けてきてくれて嬉しいわ。わたくしはロゼ・ウィリディス、スズが来てくれてうれしい」

わたしの手を取ろうとして、ルーリアさんが邪魔だと言うことに気づいたらしい。


「ルーリア、あなたそろそろ降ろしなさいな」

「む…いいだろう、久々に会ったのだ」

「わたくしは初めて会ったのよ」

2人とも笑顔のままだけれどブリザード。

さむいです。



聖女は"いとし子"とやらなので無条件で好かれてしまうんでしょうね。

いまいちぴんとは来ないのですけれど。


仕方がないのでわたしが仲裁するほかありません。

「ルーリアさん、ここまで送ってくださってありがとうございます。また何かあったらお願いしてもいいですか?」

本当はとても心苦しいのだけれど頼ると嬉しそうにするので割り切ってそういう態度を取ります。

「おお、もちろんだ。我がいとし子。其方に免じて今日はここまでにしてやろう」

にこりと微笑みわたしの頬に口づけると、龍の姿になって空へ融けていった。



「改めまして、ロゼさん…様…?」

「あら、堅苦しくする必要はないわ。まずは契約ね」

嬉しそうに微笑むと、ルーリアさんと同じように額に口づけられる。

多分緑色の模様が浮かび上がったことだろう。

「これで緑の魔法であればなんでもわたくしが力を貸すわ。わたくしの名前を呼ぶのを忘れてはだめよ」

「はい。ありがとうございます。」

今のところ魔力が伴わないので大した魔法は使えないんですけども。

魔力って増えるんでしょうかね?宝の持ち腐れな気がします。



「澱みが解消されるまで3日くらいかしら?ここへ居てくれるわよね」

「はい、そうさせていただけるとわたしも嬉しいです。街へ入れそうにないので」


少し悲しそうな顔をされてしまったので慌ててフォローもいれる。

「あっいえわたしは大丈夫なんですけど、少しやりたいこともあったので残念だなってそれくらいですよ!」

「やりたいこと?」

「棄てられてしまった奴隷を解放して差し上げたかったのです」


「よくわからないわね、それがやりたいことなの?」

精霊にとってはそういう人間のいざこざはどうでもいいことのようで、説明が難しい。

「そうですね、わたしの心が勝手に休まるだけですけど」

「まあ、スズの心が休まるのなら協力するわ!」

両手を包まれてずいっととんでもなく美しい(かんばせ)を寄せられて息が止まりました。



お美しすぎる…!!



「今はやめたほうがいいでしょうけど」

「そうですね、わたしもそう思います。」

どうやらロゼ家の目はロゼさんも使えるらしく、そこから情報を得ているらしい。

精霊の方も人間のことをのぞき見するのに使っているようだからwin-winなんでしょうね。


「あの子たちは好きだけれど、いとし子の方を大切にするのが精霊(わたくしたち)だから仕方がないわよね」

ふふ、とほほ笑む。


「今日のところはお風呂にでも浸かっていらっしゃい。わたくし少し出てくるわ」

言うが否や緑色の美しい竜に変化し、背の羽根をぱたぱたと羽ばたかせながらどこかへ行ってしまった。

ロゼさんは西洋のほうの竜…いわゆるドラゴンの形でした。




お言葉に甘えて精霊たちとお風呂に入っていると、ロゼさんが入ってきた。

ひえ、綺麗な女性とお風呂とか無理ぃ…!!

「あなたの髪を洗わせてくれないかしら」

きらきらした目で見つめられ、お断りは不可能でした。


だって美人なんです…!

美形のお願いは男女問わずつい頷いてしまいます。



「うふふ、わたくし前の聖女もこうして出迎えたのですよ。」

「そうでしたか」

懐かしそうに、それも昨日のことのように思い浮かべているようですけど、それ何百年前の話でしょうね。


「あなたたちのこの黒の髪が大好きなのよ。ほら、この子たちもそう言っているでしょう?」

「えっと…?ごめんなさい、わたし精霊さんの声が聞こえないんです」

小さな精霊さんたちがぴゃーぴゃー何か言っているのはわかるけど、それ以上はわからない。


「あら、おかしいわね。あなた目も片方ルーリアの目よね?」

「はい。」

どうやらわたしは精霊さんと触れあう能力が低いようでちょっと悲しい。

目が悪いだけかと思っていたら耳もおかしいらしい。


「では片方わたくしの耳を貸すわ。受け取って頂戴、この子たちが悲しむから」

一方的に告げられて、耳を交換したらしい。

まだいいって言ってないんですけどね!!



左の耳から小さな精霊さんの声が聞こえる。

「くろかみ!」

「すてきです!」

きゃあきゃあ騒いでいるようだけれど、会話が成り立ちそうな知能はなさそうで少し笑う。

これは本当に聞こえるだけでは。


「中級くらいの精霊になればもう少し会話が成り立つわよ?」

「そうなんですね。でもかわいいです。ありがとうございます」

「いいのよ、わたくしたちがそうしたいの」




なるべくお美しすぎる肢体は視界にいれないようにしつつお風呂を満喫したのでした。

いえ、控えめに言って最高ではありましたけど。







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