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21.護衛

「かれらを貴女の護衛に付けます」

違うタイプのイケメンが4人並んでいますね。

それぞれ赤髪、青髪、緑髪、黄髪で、わかりやすく精霊の加護を受けていそうです。

歳は20~30くらいでバラバラ。

身なりはいいし多分上の方の貴族ですね。


「ええと、お断りしますと…」

「まあ紹介くらいさせてくださいよ。それに不自由させませんよ?色々と。」

含みを持って言うそれは、いやらしい響きを含んでおり、流石にランなんとかを睨んでしまった。



笑顔で流されてイラッとします。

こういう小さな嫌がらせで溜飲下げるのやめてもらえないでしょうかね。



「ご協力いただけませんか?このままでは我が国の評判が下がるのです。聖女様を無一文で、お一人で旅立たせたと既にクレームもあがっています。国内外から。その処理をするの、私なんですよ。」

「はあ…頑張ってください」

気のない返事を返せばまた笑顔がひきつった。

この人少し面白いですけれど、最初の印象もありますしこの方からの申し出は何が何でも受けませんよ。



少し意地にもなっていますけど。



「1人の方が気楽なので、わたしから申し出があったと言えばよいのでは?」

「そういうわけにはいきません」

そうでしょうね、隷属させたいんですもんね。知ってます。

「事実今そう申し出ています」

けど一応お話合いで納得していただきたいのですよね。



「あまりお話を聞いていただけないと、強硬手段をとることになるのですよ?」

お、いよいよ脅しですね。



手首を縛る魔力封じがギリ、と締められる。眉を顰めるくらいの痛みなので、多分()()たいしたことはない。

「その拘束具は私が作った物です。お揃いの首輪も有るので、それを付けられたくなければせめてこの4人は護衛として連れてくださいませんか?」

あくまでわたしの意見を聞いてくれる体なんですよね。

脅されていますけど。



「…はあ」

小さく溜息を吐き、ラン…さんを見る。

名前なんでしたっけね?



「ランプレヒト殿、どうかそれ以上はお止めになってください。ルーリア様が酷くお怒りです」

青髪の男が静かに宥めてくれた。

確かに彼の髪の毛先が青い炎のように揺らめいている。


ルーリアさんの名前が出ているし、この人たちはこの世界の公爵家の人たちなのですね。

4人の各最上級精霊が力を貸す街を治めるのは公爵家と呼ばれているそうです。

この髪が青いのはルーリアさんの影響だったのですね。

となれば他の方々もそれぞれ最上級精霊の力を借りているのでしょう。

色からして。


「本当に厄介ですね」

忌々し気に吐き捨てると、急に笑顔を見せるのだからこの人は面白いです。

けれど、本当になんとなくですがこの方、もしかするとわたしを心底害したいわけじゃない…?

いえ勘なんて不確かなものに頼りませんけれど。


視よう、とランプレヒトさんの顔を見ると、ちょうど4人に目配せをしたところだった。


小さく頷く彼ら。

疑問を抱く間も無く、

「ギルバート・ルーリアです。ルーリア公爵家の長男で、青騎士を務めています」

「ベネディクト・ガレスだ。ガレス公爵家の次男で、赤騎士の隊長だ」

「イェリコ・ロゼ。ロゼ公爵家長男。魔導騎士」

「ウル・キーエンと申す。キーエン侯爵家の三男で、イェリコ殿と同じく魔導騎士を務めております」

と、矢継ぎ早に自己紹介を受け、思わず固まってしまいました。


やられましたね。

名前も聞かずに去るつもりだったのですが。

悠長に話を聞いている場合ではありませんでしたね。

青騎士やら魔導騎士やらよくわからないですが、おそらく立派なお役目なんでしょう。

興味ないですけど。


公爵家が精霊さんのお名前を冠しているから精霊の方を呼びたい時紛らわしいですね。

普通呼ばないから気にならないのかもしれないですが。




「ですから、お断りしているじゃないですか。不要です。今までも問題ありませんでした」

「仕方有りませんね」

ランプレヒトさんがわたしを立たせ、さっきの牢屋へ戻る。

最初に牢に入れた人とは違い、決して乱暴ではない。



ですが彼らの前ではできないことをするつもりなのでしょう。想像はつきます。

「隷属の魔法を使う、準備まで逃さぬように」

「はッ!!」

というやりとりを横目に、ランプレヒトさんを見送りました。





もうこれ以上は危険でしょうし、わたしはルーリアさんのお家へ飛ぶことにしたのでした。





***




「ルーリアさん!」

「見ていたぞ。よくここへ来たな。」

頭をわしゃわしゃと撫でるのをやめてくださいルーリアさん。


魔力封じ(こうそく)を取ってもらいます。

「すみません、お願いがあるのですが」

ここへ来たのはもちろんこの方にしかできないことがあるからです。

「なんだ、なんでも聞くぞ?」

とろりと甘く微笑まれてつい泣きつきたくなりますが、ここは我慢です。


さすがにあんな扱い受けて平気でいられるほど不幸慣れしていませんからね…



「ロゼさんにお会いしたいのです」

「そうか、ではロゼの住処まで送ってやろう」

よかった、お願いの意図が通じたようです。

街へは入れませんが、近隣にあるロゼさんの住処へ行ってしまえば澱みは解消できるでしょう。

今後も街は迂回するしかないかもしれませんね。



嬉しそうにわたしをお姫様抱っこしたままびゅーんと飛び立ったルーリアさまのご尊顔がお美しすぎて、道中の会話については何も思い出せないことをここに記しておきます。




一応覗いたランプレヒトさんですが、

『魔法と聖女の力は別、ですか。どうやら文献に齟齬があったようですね。ふむ、改良が必要ですか』

なんて愉しそうに笑っていたので、お元気そうでなによりですね。

神官じゃなかったでしたっけ?マッドなサイエンティストか何かですか。

次回以降は本当に気を付けましょう。







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― 新着の感想 ―
[気になる点] 精霊に好かれてたら加護とかでプラス補正がつきそうですが、逆に嫌われてたら呪い的なマイナス補正がつくんですかね。 例えばルーリアさんの怒りを買ったラン某さんとその血族は青の魔法を使おう…
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