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13.ルーリア

年末年始のあいだに評価やブクマいただきありがとうございます。

なるべく続きも間をあけずにあげていけたらいいなと思います。

引き続きよろしくお願いいたします。

「其方にはここへ3日ほど滞在してほしい。この森の澱みはそれで掃われるだろう」

「わかりました。」

具体的な日数など提示していただけるのは助かりますね。

わたしには澱みが見えませんので。


「見えるようになればもっと便利なのですけれど」

「其方澱みが見えぬのか?そんなはずはなかろう」

訝し気ですが見えないものは見えません。

視力は現在かなりあると思いますが、それでも見えませんし。


「であれば精霊もみえておらぬな?」

「え?はい。見えません。ルーリア…さま…さん…が初めてです」

様と呼んだらいい笑顔で圧力をかけられたのでさんで…せめてさんは付けさせてください…!


「ああ、なるほど其方女神(フロレンティア)様の力を以てしても補填できぬほど目が悪かったのだな。」

ぐいっとくっつきそうなほど近くで目を見ていらっしゃる…!

動けば口が当たってしまいそうなので息を止めて固まります。


「これでは精霊たちが不憫だな、其方の周りで踊り狂っているというに」

いや踊り狂っているのはちょっと見たくありませんが…

気付いてほしいと言うことでしょうか?


「我の瞳を片方貸してやろう。」

名案、みたいに軽く言わないでください。

「それってルーリアさんの目が一時的でもなくなってしまうってことですよね!?」

「まあそうなるが。困りはせんよ」

「だめです!」


断固拒否です。困りはしないわけありません。目ですから。

「ふむ…では交換ならどうか?」

「一時的に…?」

「其方が死ぬまで」

お断りすべきなのでしょうが、踊り狂うほどわたしと交流したいという精霊さんたちの気持ちを汲んであげたいとは思います。



「深く考えることはない。ほら、よいな?」

きらきらと美しい(かんばせ)で迫られて、わたしは負けました。




美形はずるいです。




「よ、よろしくお願いします。」

「よいよい。聖女は我々にとっても大切なのだ。この澱みは我らとてどうしようもないのだから」


彼は自分の黄金の右目に手を翳し、次いで左手をわたしの右目に翳した。

それぞれがぽわ、と浮かび上がると、彼の瞳はわたしの右目に。

わたしの瞳は彼の右目となった。


びっくりしてぎゅっと両目を閉じたあと、おずおずと瞼を上げる。


そこには掌サイズの小さな人型の精霊たちが踊り狂う光景が広がっていた。

その必死の踊りに思わず吹き出してしまう。

「こ、こんなに一生懸命…ごめんなさい、いままで見えていませんでした。」

そっと彼らに手を伸ばすと、必死な顔が一転して嬉しそうな顔へ変わる。


ぴーぴーと小鳥のように囀るだけで、言葉は通じないようだ。

「ルーリアさん、ありがとうございます。」

「よい。そなたと瞳を共有できたことだけで我は嬉しい」

とろけるように微笑まれ、盛大に心臓が跳ねた。



本当にやめてくださいご自分の美形を自覚していただきたい…!



「さて、澱みが見えるか確認しにゆこうか」

おもむろにわたしのことを横抱きにし、ふわりと飛び上がった。

ひえ、いいにおい、じゃないお姫様抱っこだ!

「るるるるルーリアさん!?」

「あの場からでは見えぬ。おとなしくせよ」

こつ、と額を額に押し付けられ、視界にひろがる美形攻撃に撃沈し、わたしは大人しくなったのでした。



この美形、わたしが顔に弱いのもう勘付いてますね!?



ルーリアさんに抱きかかえられたまま森の上空に浮かんでいます。

高いし怖いですが不思議とルーリアさんと触れていると安心してきます。


「森の上に掛かる物は見えるか?」

すっと指さす先を辿れば、たしかにもやもやっとした霧のようなものが見える。

勝手に黒いものを想像していたのだけれど、どちらかと言えば雲とか霧のような白っぽいもののようだ。

「はい、霧のようなものが見えます」

「うむ、正常に働いているな。」

満足げに頷くと、さっきの場所へ降ろしてくれた。


「さて、我はしばしここを離れるが、其方は我が戻るまでこの建物を出てはならぬぞ」

と言い残すとルーリアさんは龍になってどこかへ飛んで行ってしまった。


その間にわたしはお風呂にはいろう。

と言っても鞄にはいっていた桶に水を張り、服に浄化をかけてタオルで体を拭いて…

という簡単な物だけど。

石鹸やシャンプーも入っていたので有り難く使わせてもらいます。

あの奴隷斡旋屋さん一瞬の間にどれだけのものを詰めてくれたのだろうか。

いつかお礼がしたい。



と思っていると、子供くらいのサイズの精霊がわたしの手を引く。

「え、とどこへ…」

言葉は話せないようで、ぐいぐい連れてこられた先は、お風呂でした。

「ええとここを使ってもいい…のでしょうか?」

こくこくと頷いてくれたので、そうかと納得しお風呂に入らせてもらいましょう。



とてつもなく広いここは、ルーリアさんが龍の姿になっても入れそうなくらい。

シャワーもあるし、石鹸やシャンプーもあるので使わせてもらいます。



ここにもたくさんの精霊たちがいる。

嬉しそうに一緒に湯に浸かっているところを見ると、精霊たちはお風呂好きなのかもしれない。

ぷかぷかとたくさん浮かぶ精霊たちを指でつついて遊ぶと嬉しそうにする。

かわいいですね、ものっすごい。

嬉しそうにぴいぴいと囀る小さな精霊さんに癒されます。


「ここにいたか」

お風呂場に美しいお声が反響していますね。

わたしは振り返れません。

だって全裸ですから。

湯船に溜まるお湯は濁り湯で、体は見えないと思いたいですが。


「あああああのルーリアさん!?」

「ああ、そうか異世界からきた聖女は特に恥ずかしがるのだったな。久々で忘れていた。すまぬ」

わざと立てたであろう足音が数歩下がる。

「服を用立てておいた。此処に置いておくから着るといい」

「よ、よろしいのでしょうか?」


「よい。我が贈りたくて用立てたのだ。着ないというならば捨てるしかなくなる」

「ありがたく頂戴します!!」

捨てると言われたらもらうしかないです。

日本人の性質をなんとなく理解されているようで何よりです…


「それでよい。ではゆるりと体を休めよ。其方、人の集団では体が休まらないのであろう?」

ふふ、と笑うとルーリアさんは去って行きました。


さすが精霊の長ともなるとお見通しなんでしょうか。

人の、というかあまり知らない人のというのが正解です。

これは信用できないとかではなく普通に人見知りをしているんですよね、わたし。


一見してないように見せかけて、心の中では人見知りするタイプなんです。

しかもなかなか心をひらかない面倒くさいタイプです。

頭では理解していますがそうそう直るようなものではないですね。



服はなんだかみたことがない凄まじく滑らかな布でできた青のワンピースでした。

この世界に来てからワンピース以外の着用が認められていないようなんですけど、やっぱり聖女の正装なんでしょうかね。

謎です。






20200118:誤字報告感謝します。文字重複削除しています

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