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斬って斬って焼いて

 フレッシュ・ゴーレムの動きはオーガとおなじかそれ以上に緩慢だった。

 代わりに攻撃力と耐久力、特に後者はアンデッドだけあって飛び抜けて高いモンスターだ。

 俺とベルナンディアは左右に分かれて挟撃を仕掛ける。

 敵は武器を持たないので至近距離での攻撃にのみ気を付ければ問題ない。


 俺とベルナンディアの攻撃に先行してケイウッドの矢がフレッシュ・ゴーレムの胸もとに突き刺さった。

 矢傷から鮮血が噴き出す。

 フレッシュ・ゴーレムのアンデッドらしからぬ特徴として、人間の死体を使っているため傷をつけると通常のモンスター同様、血が噴き出るというものがある。

 加えて耐久力があるので倒すには相当量のダメージを与えなければいけない。

 そのため倒し終えるときには辺り一面が血の海になることがしばしばある。

 死体が使われているだけでなく、真っ赤な血液が大量に撒き散らされるのもこのモンスターならではの特徴であり、敬遠される要因だった。


「グブリュルッ!」


 フレッシュ・ゴーレムが血液の混じった、くぐもった声をもらした。


「わしから行くぞ!」


 フレッシュ・ゴーレムの大振りの拳を両手斧の腹で受け流し、ベルナンディアの一撃が腿に深々とした裂傷を刻んだ。

 両手斧に付与された火属性の魔力が傷痕を焦がし、血液の噴流を最小限に留めた。


 俺とベルナンディアの武器に火属性の付与を施したのはアンデッドに効果的というだけでなく、噴き出る血が目に入ったり、血溜まりで足を滑らせることを防ぐための予防策でもあった。


 だが、ベルナンディアが付けた焦げた裂傷はすぐ周囲の肉が隙間を覆い、直線の焦げ跡だけ残して傷がふさがってしまった。

 トロールなどの再生能力に似ているが、こいつの能力はあくまで死肉による補修であり、回数に限界がある。

 その限界がくるまで、俺たちはひたすら切り刻むまでだ。


 ベルナンディアの攻撃に意識が向いたフレッシュ・ゴーレムの逆の足の付け根を火気を帯びたロングソードの刃で切り裂く。

 痛みを知らない肉のゴーレムは攻撃後の俺めがけて拳をふりかざした。

 避けられるかギリギリの距離。

 そのとき、ケイウッドの声が響き、


「《加速アクセラレーション》!」


 体が急に軽くなり、ゴーレムの拳をすんでのところで回避した。


「ケイウッド、助かる!」


「おうよ!」


 戦闘経験を重ねてきたおかげか、ケイウッドの立ちまわりも板についてきた。

 盗賊は前衛のクラスではあるが、どちらかといえば攻撃より味方の支援あるいは敵の牽制が得意なクラスだ。

 ケイウッドの支援スキルを入れるタイミングの見極めは単なるレベルアップだけでなく、積み重ねてきた経験によって会得できてきている。

 かなり成長してるな、俺たちのリーダー様よ。


 攻撃が空振りに終わったゴーレムのふくらはぎにメルティエの《火球ファイア・ボール》が炸裂する。

 俺とベルナンディアがゴーレムの足を重点的に攻撃しているのを見ての判断はさすがだ。

 察しのいいエルフの仲間に感謝しながら続けざまに膝裏にロングソードを突き刺す。

 骨格としての骨がないので刃が膝頭から貫通して飛び出た。

 すぐに引き抜いてゴーレムの裏拳を回避する。

 動きは遅いが力は強い。

 一撃もらえば行動不能に陥ってしまうだろう。

 だが、オーガとの戦闘経験がある俺たちは着々とゴーレムの死肉を削っていった。

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