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魔侯爵の城
魔侯爵の城はひと言でいうと奇妙な場所だった。
城内はまるでダンジョンのように入り組んだ構造をしており、さらに奇妙なことにモンスターがいる部屋があったかと思えば、わざとらしく宝箱が安置されている部屋まであった。
宝箱には罠が仕掛けられているものもあり、ケイウッドやレクストのスキルで解除すると、中には薬草やナイフ、ポーションなどが入っていた。
奇妙なのは、この用意されたかのようなモンスターや宝箱の存在があきらかに俺の知っているゲームにありがちなダンジョン然としていることだ。
通常、モンスターは通路を徘徊しているものだし、宝箱なんてものは存在しない。
ゲームであれば冒険者向けの宝箱があるのは自然なことかもしれないが、この世界は「コレクターズ」というゲームの世界観を基にした「現実」である。
あくまで現実である世界において、どこの誰がわざわざ冒険者のために用意したとしか思えないような宝箱を設置するだろうか。
俺はこの城の主、魔侯爵の正体についてなかば確信じみた想像をめぐらせた。




