92/254
作戦は迅速に
作戦が決まり、ガルドが騎士団に作戦内容を伝えるとすぐに出立することになった。
騎士団長であるガルドの言葉だからこその迅速さであり、かつ騎士団内部における貴族派閥の騎士がガルドを煙たがっていることの証明でもあった。
ガルドが立案した作戦が失敗に終われば王派閥を攻撃する格好の材料になる。
また、王派閥の騎士であっても平民出身のガルドを良く思わない者もいるらしい。
王政そのものも含め一枚岩でないと聞いてはいたが、今回それゆえに作戦が素早く実行に移せることになったのは皮肉ながら幸いだった。
騎士団から馬を借りた俺たちはレンドルの城壁の外に出た。
日はすでに落ち、あたりは暗闇に覆われている。
奇襲といっても敵は魔侯爵と名乗り、アンデッドを操る輩だ。
夜目が利くと考えたほうがいいだろう。
それならわざわざ暗闇にまぎれて馬を走らせる必要もない。
俺たちは松明に火を灯し、魔侯爵の居城までボルゲン丘陵をいっきに駆け上がった。