可能性の後押し
俺は悩むガルドの背中を押すために可能性の話を付け加えた。
「ガルドさん、魔侯爵の討伐は急いだほうがいいかもしれないですよ」
「それはどういう意味か?」
「昨夜の敵はスケルトンの集団でした。数こそ多かったけれど、倒せない敵ではなかった。だから倒した。ここまではいい」
ガルドは俺の言いたいことに勘づいたようだ。
「そうか! 魔侯爵の尖兵を倒してしまったら……」
「そうです。もしかしたら魔侯爵の怒りを買ってしまったかもしれない。そして、次はもっと強力な軍勢を送り込んでくる可能性が高い」
昨夜は迎撃に必死でそこまで考える余裕がなかった。
だが、冷静に考えれば至極当然の話だ。
聞いた話では昨夜の夜襲が魔侯爵からのはじめての襲撃だったようだ。
だからまずは小手調べとして弱いモンスターで様子を見た。
その軍勢を退けたのなら次はより強力な軍勢で攻めよう、そう思案する可能性は十分に考えられる。
騎士団がたとえアンデッドが相手であろうとまともに戦える者たちばかりならさほど問題はない。
だが、アンデッドが相手になると及び腰になってしまうのでは戦力として期待できない。
もちろん俺たち冒険者と戦線を共にしたくないという私情も込みでの話だが、それでも戦わないのに代わりはない。
次また攻めてきたときに騎士団が対応できないのでは、こちらの戦力がすり切れる一方だ。
それではこの都市を守りきれる保証はない。
守ることがむずかしいのであれば、逆にこちらが攻めに転じれば済む、というわけだ。
「騎士団が騎士団として機能すればこの都市も守れるでしょう。でも、もしそこに不安があるのであれば……」
「こちらから打って出るべき、ということか……」
ガルドはうなずきながら腕を組んだ。