表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
9/238

冒険者登録

 酒場の反対側にはカウンターがあり、窓口にはキレイなお姉さんたちが冒険者相手に対応していた。

 俺はちょうど接客の終わったカウンターに向かい、茶髪のお姉さんに笑顔で話しかけた。


「すみません、俺、冒険者になりたいんですけど!」


「ようこそ冒険者ギルドへ。冒険者登録ですね。かしこまりました」


 お姉さんは気持ちいい笑顔でお辞儀をすると一枚の紙とペンを差し出した。


「こちらにお名前とお望みのクラスをご記入ください」


 俺は迷うことなく「シュウジ」と記して、はたと手を止めた。

 そういえば俺のクラスは何がいいんだろう?

 以前は廃人レベルでやり込んだ結果、最終的にアイテム収集をめざしてアイテムマスターのクラスをカンストさせていた。


「あのー、クラスってあとから変えたりできるんですか?」


「はい、可能です。一定レベルまで技を習得すると他職への転職が認められますよ」


 つまりクラス選びでさほど慎重になる必要はないということか。

 というかレベルとかちゃんとあるんだな。

 ステータスパネルは表示されなかったのに。

 それなら以前と同じくアイテムマスターで特に問題ないだろう。


 クラス欄に記入するとその下に「目標」という項目があった。

 冒険者として何をしたいかということか。

 そういえばこの世界にゲームのラスボスにあたるようなものは存在するのだろうか。


 それに現実世界で死んで転生したみたいだけど、俺のステータスやスキルはどうなっているんだろう。

 まるでわからないことだらけだ。

 まだこの世界の仕組みにも慣れてないし、当分は情報収集する必要があるな。


「目標は……すべてのアイテムを収集、でいいかな」


 名前、クラス、目標を書き終えてカウンターのお姉さんに用紙を渡した。


「シュウジ様、クラスは、えっと……、アイテムマスターでアイテム収集が目標ということでよろしいのでしょうか?」


 んん、なんだかお姉さんの反応に戸惑いを感じる。

 もしかしてアイテムマスターなんてクラスはないとか、そういうことなんだろうか。


「えーっと、アイテムマスターってクラスは存在しないってことですか?」


「いえ、そういうわけではないのですが、とてもめずらしかったものですから……」


 む、そうなのか?

 さまざまなアイテムに精通することができるから便利なクラスだと思うのだが、言われてみるとたしかに以前の「コレクターズ」の世界でもアイテムマスターなんてクラスを選ぶやつは自分以外に見たことなかった気がする。


「もともとクラスは自己申告によるものなので、ギルド側で特別な規定があるわけではないのです。ですからシュウジ様がアイテムマスターを望まれるのであれば、それはそれで特に問題はありません」


 え、自己申告って、要するに自称ナイトとか自称ウィザードみたいにクラスはすべてその人の名乗りに過ぎないってこと?


「はい、そういうことになりますね」


 えー、なんかちょっとガッカリだな。

「コレクターズ」の世界ではゲームだから当然かもしれないけど、ちゃんと決められたクラスがあって、そのクラスに応じたスキルを習得できたりしたのに。

 自称ってことはスキルの習得も単純に動作に慣れて上手くなるとか、そういうことなんだろうか。


「まあ、アイテムマスターでいいです」


 以前はそれでずっと冒険していたから愛着がある。

 自称っていうのはちょっと引っかかるけど。


「あ、あと、申請されたクラスと目標に応じてその方だけの固有スキルが習得されます。これは最初のクラスについたときにのみ付与される女神アエラ様の祝福です」


 女神アエラは冒険者なら知らない者がいないくらい有名な勇気の女神だ。

 だけど、クラスにつくときに特殊なスキルが与えられるなんて話は聞いたことがない。

 どうやらこの世界は俺の知ってる「コレクターズ」の世界とはすこし勝手が違うみたいだ。


「なるほど、よくわかりました。クラスも目標もそのままでいいです。登録お願いします」


 正直、固有スキルといわれるとナイトやウィザードなんかのメジャー職でどんなスキルを得られるのか興味はある。

 だが、俺はかつてすべてのアイテムを収集し、アイテム道を極めた者。

 いまさら他のクラスに浮気なんてするつもりはない。

 どうせならこの世界でも一途にアイテムを集め、極めてやろう。


「お待たせしました。シュウジ様、冒険者登録が完了いたしました。今後のご活躍を期待しております」


 キレイなお姉さんはにこやかに笑って会釈した。

 どうやらこれで俺は晴れて冒険者になれたらしい。

 実感はまだ湧かないが、なんとなく誇らしい気がした。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ