癒しのまほう
レンドルにもどると、まずガルドから謝罪と感謝の言葉をいただいた。
だが、夜半に起きて、ずっと戦いづめだった俺たちが必要とするものは言葉よりも休息だ。
ガルドに簡単にそのことを説明して、とりあえず宿にもどって俺たちは一も二もなく爆睡した。
目が覚めると窓の外がキレイな夕焼けの色に染まっていた。
ケイウッドはまだ寝ていたので起こさないように部屋を出て、宿の一階でイスに腰を下ろし、水を口に含む。
ああ、よく寝た、すごい寝た。
疲れが完全に抜けたわけではないが、とりあえずの体力は取り戻せた。
ふり返ってみると昨夜はよくもまああんな大軍勢を相手に戦えたもんだ。
勢いってすごい。
それに仲間たちとの連携もかなりスムーズにこなせていた。
ステータスを思い描くと脳裏にパネルが現れた。
いつの間にかレベルが相当あがっている。
あれだけのモンスターを倒せばそれもそうか。
使用できるスキルや魔法もかなり解禁されていた。
「シュージ、もう体力は回復できたのかの?」
階段を降りながら話しかけてくる少女の声。
「まあな」
昨夜、獅子奮迅の活躍を見せたドワーフ娘は俺と同じテーブルについた。
「ネムリとメルティエは?」
「まだ疲れが抜けておらんようじゃ」
なんだかんだ体力バカな俺とベルナンディアがもっとも回復が早いというのも道理か。
「ふと考えてたんだけどさ……。つい数日前まで初心者だった俺たちが、昨日はよくあれだけの数のモンスターを相手に戦えたなーって」
気が抜けたようにポツリとつぶやくと、ベルナンディアはいつにも増してやわらかな笑みを浮かべた。
そして俺のそばにやってきて、イスに座っている俺の頭にその小さな手をポンと乗せた。
「よく頑張ったのう。よしよし」
抱きしめられ、優しく頭を撫でられた。
俺はゆっくりと目を閉じた。
あたたかい……。
たったそれだけのことなのに、いつからか俺のこころにへばりついていた緊張や恐怖といった負の淀みがドロドロと溶け落ち、まっさらに浄化されていくのを感じた。