乗り合い馬車にて
商業都市イムネマから城塞都市レンドルへは馬車でだいたい三日以上はかかる。
イムネマからほとんど外へ出たことのない俺としては期待半分不安半分といったところで、なんとも落ち着かない気分だった。
あくまで王国軍のバックアップがメインとはいえ、仲間たちも普段より言葉数は少なめだった。
そんな馬車の中、俺たちとは逆にむしろクエストを楽しみにしている連中がいた。
「は〜、城塞都市レンドル、楽しみやわ〜」
「戦いの前線だものね。凛々しいイケメンがたくさんいるかと思うと、ゾクゾクしてきちゃうわ〜」
「あなたたち! 少しは緊張感を持ちなさいよ!」
「まったくだ。一度死んで生まれ直したほうがいいな」
ギャーギャーうるさいのは馬車の乗り合いでいっしょになったもう一つのパーティだった。
「うるさくてごめんなさいね。うちの連中、どうにも緊張感が足りなくて」
ウォークレリックの女性、パーティリーダーだと聞いたが、名前はたしか、
「いえ、お気になさらず。パトリシアさん」
金髪の気の強そうな外見ではあるが仲間思いなのが伝わってくる。
「君たちも俺らと同じブロンズクラスの冒険者なんだろう?」
「ああ、まだストルフのダンジョンをクリアしたばかりでさ、魔侯爵とか立派な名前聞くとさすがのオレもちょっと緊張しちゃうわ〜」
「無理もないさ。俺だって緊張してないといえば嘘になる。俺らレンジャーや盗賊は警戒するのが仕事だからな。むしろ緊張の欠片もないやつはクラス失格だ」
レンジャーの長髪男、レクストが気を利かせてか、ケイウッドに話しかけていた。
レンジャーと盗賊はクラスの役割が似ているためか、二人とも思いのほか共通した話題で盛り上がっていた。
「ねえねえ、あの黒髪のシュージちゃんと茶髪のケイウッドちゃん、彼氏や彼女っているのかしら?」
「ええっと、さあ、どうなんでしょう? わたしも詳しくは知らないですね」
メルティエから情報を聞き出そうとしているクネクネしたガタイのいいマッチョ、女口調で話している男だ。
名前はラブ・ファイア・ラブハート。もう一度言うが男だ。
名前もぜったい偽名だと思う。
本人は「らぶらぶって呼んでね」と自己紹介してきた強烈なやつだった。ぜったい呼ばない。
クラスはなかなかめずらしいネクロマンサーだったか。
本人はあくまで「おねえクロマンサーよん」と主張していたが、もはやツッコむ気力も失せる個性の持ち主だった。
そして最後の一人が、
「なあなあ、シュウジくん、君もうちと同じヒノ国の出身なんやろ? こんなところで同郷の男の子に出会えるなんて、運命やわ〜」
赤く染めたほっぺたを両手で包んで、グイグイ体をすりつけてくる少女、商人のナルミだった。
ぶっちゃけ距離が近すぎてうっとうしいくらいだが、名前や黒髪、関西弁を話すあたりが日本人を思わせる。
ナルミの言うヒノ国がこの世界における東洋の国という位置づけで問題ないようだ。
知識としてはもちろん知っていたが、実際の事情はゲームと大きく異なることも多い。
今回のクエストの魔侯爵も元のゲーム「コレクターズ」には存在しなかったキャラクターだ。
慎重にいろんな情報を収集するに越したことはない。
俺は元気で騒々しいナルミの相手をしつつ、ヒノ国の話など、さまざまな情報を聞き出していった。




