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魔侯爵

「だが、今年は帝国の攻撃はない」


 それはどういう意味か。


「ボルゲン丘陵に突如として現れた魔侯爵と名乗る者のせいだ」


 俺はケイウッドに視線を向けた。

 魔王なんて悪の親玉みたいなやつはいないよ、とのたまったことを俺は忘れていないぞ。

 だが、魔侯爵なる者についてはケイウッドも本当に知らなかったようで、軽く首を左右にふった。

 まわりを見まわすとケイウッドだけではない、ベルナンディアもメルティエもはじめて耳にする名前のようだった。


「その魔侯爵という輩はいつごろ現れたんです?」


「ひと月ほど前だ。いつも帝国との戦争で拠点となっている城塞都市レンドルから真っ直ぐ、ボルゲン丘陵の頂にいつの間にか奴の居城が築かれていた」


「そうすると、オレたち冒険者への依頼はその魔侯爵退治の手伝いってことっすね?」


 ガルドはゆっくり首を横にふった。

 その動作はケイウッドへの否定以外にも意味が込められているようだった。


「間違いとは言えないが厳密には違う。魔侯爵はあくまで王国軍が仕留めねば貴族たちに示しがつかないのだ」


 ガルドはふたたびエールを煽った。

 なるほど、魔侯爵は退治したいが、貴族派閥への示威として王国の正規軍が討ち取らなければならないというわけか。

 めんどくさい制約がついているものだ。


「では俺たちへの依頼というのは?」


「ボルゲン丘陵に至る道は二つある。一つは真っ直ぐに頂へと続く正面の道。もう一つは峻厳な山に挟まれた渓谷だ。冒険者の皆にはそちらの道を守ってもらいたい」


「ふむ、つまり王国軍が背後を突かれ、挟撃を受けないようにしたい、ということじゃな?」


「端的に言えばそういうことだ」


 なるほど、クエストの概要はわかった。

 だが、一つ疑問点がある。


「今まで帝国軍と戦っていたときはその渓谷も王国軍が守っていたわけですよね? それならなぜ今回は冒険者の手を借りることにしたんですか?」


 ガルドは頭が痛いとでも言いたげにこめかみに手を当てた。


「帝国軍の戦力などたかが知れていた。本気の戦争ではないからだ。だが、魔侯爵の軍勢は魔族を使役するということ以外は戦力が未知数だ。そのため、こちらも正規軍をすべて正面に投入したい」


 なるほど、ガルドの置かれている状況はだいたい理解した。

 だがやはり疑問というか、より良い方策があるように思えてならない。

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