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王国の内情

「さて、今度こそ本題に入ろう」


 俺たちが来る前にまわりの冒険者たちには話し終わっていたようで、まわりを囲んでいた人垣はいつの間にか消えていた。


「先ほど、他の冒険者たちも巻き込んでギルドの方にも正式に依頼を出した。だがせっかくだ、詳しく話そう」


 ガルドは杯を置いて、一拍、間を空けた。


「王国の南方、ボルゲン丘陵をご存知か?」


 もちろん知っている。

 丘の西側に沼地があり、そこから低級のアンデッドがわき出る狩り場だったはずだ。


「例年、スペディオ帝国と小競り合いをする丘のことじゃな?」


 え、小競り合い?


「ベルちゃん、その言い方は……」


「ふふ、構わんさ」


 どうやらこの場で事態を飲み込めていないのは俺と子どもであるネムリだけのようだった。

 まあ、ここは流れに水を差すべきじゃないな。

 話の断片から想像してみよう。


「私たち王国騎士団は毎年、南のスペディオ帝国とこのボルゲン丘陵で戦争をしてきた。戦争といっても帝国側が我が国の政治に揺さぶりを掛けるための脅しのようなものだ」


 ふむふむ、ぜんぜんわからん。


「これは公然の秘密だから伝えておこう。我が国の政権は王派閥と貴族派閥との間で揺れ動いている。王権政治といえど貴族からの税収で王国軍はおろか、国内の行政もその資金を貴族に支えられている面がある。だから絶対の権力者である王も貴族たちの立場を立てて政治を行う必要がある」


 ふむふむ、むずかしい話だけどなんとなく見えてきたぞ。


「貴族派閥の中には王権をよく思わない者もいる。つまり、王国の政治は一枚岩ではないのだ。そして、そこにつけいって内紛を引き起こそうとしているのがスペディオ帝国であり、その揺さぶりが毎年の戦争というわけだ」


 なるほど、要するに玉座をねらう貴族がいて不安定な王国に、帝国がチクチクとちょっかいを出しているというわけか。

 じゃあ、帝国側は何も本気で王国と正面からぶつかろうとしているわけじゃないのか?


「その通りだ。帝国は南の豊穣な穀倉地帯に恵まれ、この商業都市イムネマとも交流がある。軍事力では王国に比肩するかもしれないが、わざわざ危険を冒してまで他国に攻め入る理由がない。自らの国力を落とす必要がないのだ。奴らにとって我々への攻撃は嫌がらせのようなもの。うまく紛争でも起きて王国内部で分断が生じた隙に漁夫の利を狙おうという目論見だ」


 ガルドはそこまでいっきに話してエールを煽った。

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