仲間たちの反応
「そうだ。そういえば風呂で会った戦士風の男の人からクエストの依頼について、酒場で話を聞くことになってたんだ」
ネムリの種族や性別の話をしてから俺は裸の約束を思い出した。
ネムリのことについては各自、なんのことはなく冷静に受け入れたり、驚き慌てふためいたりしてまあそれぞれに一応、受け止めていた。
新しく加入したエルフ族のメルティエしかり、ドワーフ族のベルナンディアしかり、わがパーティは思ったより人間以外の種族が多い。
そうした下地があったことで他種族を受け入れる気持ちの余裕につながっていたことは十分に考えられる。
俺も経験上、彼女たちの種族についてとやかく言うほど戸惑いはしなかった。
デーモン上等、他種族パーティ、どんとこい。
むしろ、ネムリが女の子だったことにみんな驚いていた。
特にメルティエは「ネムリ、ちゃん……」と頬を紅潮させて不気味な笑みを浮かべていた。
メルティエはベルナンディアのときもそうだったが、なんかこう、うん……。
せっかく美形のエルフ族なのにすごく残念な感じになってることにはあまり触れないほうがいいか。
まあ女性同士、仲良くやることは悪いことじゃないだろう。たぶん。
「で、その戦士風の男からクエストの詳細を酒場で飲みながら聞く、ということで良いのじゃな?」
「ああ。別に無理して飲む必要はないけどな」
咄嗟に釘を刺しておく。
昨日みたいな惨劇はごめんだ。
「きょ、今日も飲むなら、ベルちゃんはわたしの膝の上で飲む、というのはどうですか?」
はあはあと息を荒くして申し出るメルティエに、
「いや、そんな気遣いはいらん。わしは子供ではないからの」
「はぅっ……!」
すげなく返されているのにどこか嬉しそうなメルティエが怖い。けどツッコまないぞ、俺は。
一方、ケイウッドはネムリに向かってどこか真剣な眼差しを向けていた。
「ネムリ、こまったことがあったら何でも言ってくれよ。力になるからね」
「ありがとう、ケイ!」
こいつもロリコンか、と一瞬、疑ったがどうもそういう気配ではなかった。
ケイウッドが心から優しそうに笑い、ネムリの頭を撫でている。
よくわからないがネムリの性別問題はつつがなく受け止められたようで何よりだ。
「とりあえず冒険者ギルドの酒場に移動しよう」
細かい時間までは指定されなかったが、早ければすでに酒場に来ている可能性もある。
内容次第では次の金策として是が非でも引き受ける必要があるのだ。
依頼主を待たせることはなるべく避けたい。
まだ夜とは言えない時間だったが、ともかく俺たちは酒場に向かうことにした。