エルフ族のメルティエ
宿へもどるころにはすでに夕方になっていた。
宿屋の一階では、やっと目を覚ましたらしい仲間たちが遅すぎる朝食を取っていた。
「お、シュージ! 仲間を置いてどこ行ってたんだよ〜」
顔色の回復したケイウッドがいつもの調子で手をふった。
「アイテム屋に行ってた。みんな、調子はもういいのか?」
「みんな、もう元気みたいだよ」
ネムリに続いて、
「オレ様があの程度の酒で酔うわけないじゃないか!」
うん、リバースしてたお前を介抱したの俺だけどな。
「わしはぜんぜんへっちゃらじゃ。今夜も早く飲みたいのぉ」
このドワーフ娘は底なしか。
「わたしもだいぶ回復しました。ご迷惑おかけしました」
「ああ、いえ、こちらこそ迷惑かけちゃってすみません」
たしかメルティエさんといったか。
俺の身代わりとして酔いつぶれた金髪のお姉さん。
よく見るとメルティエさんの両耳が尖っている。
この特徴はまさかエルフ族なのか?
「なあケイウッド」
「そんなことよりシュージ、メルティエさん、オレたちの仲間になってくれてもいいってさ」
えええええ!
おいちょっと待てこの人たらし。
お前は何を言っているんだ。
「え、えっと、メルティエさんが俺たちの仲間に……?」
「はい、何だかそんな感じの流れになってしまいまして……」
戸惑いぎみじゃないかよケイウッドおいこの野郎。
「えっと、メルティエさんはエルフ族、ですよね?」
「そんなの見れば分かるじゃろ。ほれ、メルティエの耳はこんなに尖っておるぞ」
「きゃっ……!」
ベルナンディアがメルティエさんの耳をつまんだ。
君もちょっと待とうか、ベルナンディア。
俺の戸惑いを放ったらかして勝手に話が進んでいる。
「あ、あの、自己紹介が遅れました。エルフ族のメルティエと申します。ウィザードをしており、レベルはまだ5になったばかりです」
「あ、どうも、シュウジです。アイテムマスターを目指してます」
丁寧な自己紹介にあいさつを返したものの、いまだ俺の頭は混乱中だ。
「いや、その、俺たちのパーティに入ってもらえるって本当ですか? このうさんくさい盗賊にだまされてませんか?」
「その言い草はあんまりだよシュージ」
隣でよよよ、とハンカチで目もとをぬぐう仕草をするバカ盗賊は無視する。
「あ、はい。わたしなんかでよかったら、ぜひ仲間に加えてやってください」
「ほれほれ、おなごにここまで言わせてまさか断りはせんよな、シュージ?」
お願い、ちょっと黙っててベルナンディア。
「メルティエさんがそれでいいなら俺も異論はないです。正直、ウィザードが仲間になってくれるのは心強いです」
昨日から立て続けに仲間が増えていってるが、正直パーティとしてのバランスが非常によく整っている。
盗賊のケイウッド、騎士のベルナンディア、神官のネムリ、あまり目立った特徴はないけどアイテムについてはエキスパートの俺。
ここに攻撃系魔法を使えるウィザードが加入してくれるのはとてもありがたい。
断る理由なんてなかった。
「じゃあ、これからは仲間ということで、よろしくお願いします。……えっと、メルティエさん」
「こちらこそよろしくお願いします。仲間になったのですから、さんは付けなくていいですよ、シュージ」
「わかった。よろしくな、メルティエ!」