ネムリの邪悪魔法
「それじゃあ、いくよー」
「おう、こい!」
適度に距離をとって、ネムリと対峙する。
ネムリは俺に向かって手をかざし、目をつむった。
「《体力吸収》!」
ネムリから俺に黒いモヤのようなものが走り、俺の体にまとわりついた。
黒い煙のようなものが消えた瞬間、俺は気が遠くなるような感覚に襲われた。
ガクリと体を落とし、膝をつく。
呼吸が荒くなり、全身に疲労感が広がる。
「シュー、だいじょうぶ!」
「あ、ああ、大丈夫だ……」
大丈夫ではあるけど、これは驚いた。
たしかに俺の体力が奪われ、次の瞬間、ネムリの体が緑色に輝くのが見えた。
なるほど、これはたしかに邪悪魔法だ。
まさか本当にプリーストでありながら邪悪魔法が使えるとは思わなかった。
ネムリがデーモンだという主張もあながちウソではないのかもしれない。
「すごいな、ネムリ。今のはたしかに邪悪魔法だった。でも、どこでこんな魔法を覚えたんだ?」
ネムリはまだまだレベルが低いはずだし、そもそもプリーストが邪悪魔法を覚えられるなんて奇妙な話だ。
「わかんない。気づいたら使えるようになってた」
種族はデーモン、か。
もし本当だとしたら、ネムリは人間の敵になったりするのだろうか。
俺はそんなことを考えながら地面に座り込んだ。




