薬草の天日干し
俺とネムリは風呂からあがると宿へもどった。
部屋をのぞくとまだ誰一人として眠りから覚めていない。
あれだけガバガバ酒を飲んでいたら無理もない。
俺はネムリを連れて宿屋の中庭に移動した。
今日は日が照っていて風もない、絶好の干しもの日和だ。
俺は《無限の宝庫》から薬草を次々に取り出して中庭にならべていった。
大量に買った薬草をすべてならべると宿屋の中庭が薬草で埋まった。
これだけ見ると雑草まみれの庭に見えるかもな。
「シュー、なにしてるの?」
「薬草を日にさらして乾燥させるんだよ。乾燥したら砕いて薬草水をつくる。回復アイテムをつくるってことさ」
「なるほどー」
ネムリは反応が素直でかわいいなぁ。
「薬草が乾燥するまで俺はまたマジックアイテムをつくるつもりだが、ネムリも何か、たとえば魔法の練習とかしたらどうだ?」
と、言ってはみたものの、プリーストのネムリは体力や状態回復の魔法がメインだから練習のしようがないか?
「ううん、ボクね、邪悪魔法も使えるからそっちの練習するよ」
「プリーストなのに邪悪魔法が使えるのか?」
「だってボク、デーモンだもん!」
ここぞとばかりに力強く主張した。
うーむ、邪悪魔法が使えるプリーストなんて聞いたことがない。
そもそも魔法には種族やクラスによる適性がある。
火や水、氷はウィザード、自然魔法はドワーフ族やエルフ族、ドルイド、神聖魔法は天使族、プリースト、邪悪魔法は悪魔族やネクロマンサー、アンデッドなど。
それぞれの属性に適していないとその属性の魔法は覚えられないし使えない。
「じゃあネムリ、簡単な邪悪魔法を俺にかけてみてくれるか?」
「え、でもそれじゃあシューが……」
「大丈夫だ。ただし、あまり強くかけないでくれよ。こんなところで倒れたくないからな」
俺は冗談半分にネムリをうながした。