屈強な男ガルド・スワルド
俺たちのすぐ横の湯船に入ってきた男は熱湯に小さくうなり声をあげ、肩までつかった。
屈強な冒険者なら何かためになる話でも聞けるかもしれない。
おなじ冒険者として顔を売っておくのも後々、役に立つかもしれないな。
「失礼ですが、冒険者の方ですか?」
男はこちらに向き直った。
居住まいを正して、こちらの様子をうかがうように観察してから、
「冒険者ではないが、似たような仕事をしている者だ」
堅苦しい話し方に礼儀正しい性格が垣間見えた。
「そうでしたか。名乗り遅れました。俺はシュウジといいます。こっちはネムリ。ともに冒険者をしています」
「これは丁寧に。私の名はガルド・スワルド。冒険者ではないが騎士をしている、と言ったほうが正しいか」
ガルドと名乗った男は盛り上がった筋肉といい、体中についた傷痕といい、歴戦の戦士としての風格を醸し出していた。
「ガルドさん、とよんでよろしいか。あなたは何をしにイムネマに? 冒険者でないのならクエストをこなしに来た、というわけではないですよね?」
そう言うとガルドは俺とネムリの顔をじっくりと見つめ、
「ふむ、失礼だが貴殿らは駆け出しの冒険者、と見て間違いないか?」
何か値踏みをされているような心地がする。
ここは素直に答えたほうがいいだろう。
「はい、そのとおりです。俺らとあと二人、仲間がいて、昨日、初級者向けのストルフのダンジョンを攻略してきたところです」
「なるほど……」
ガルドは少し考え込んだあと、意を決したようにこちらを見つめ直した。
「いや、失礼。私がこの街に来た目的に貴殿らが当てはまるかどうかを考えていたのだ」
「目的、ですか」
「ああ。私は王国、アルヘルム王国の王都から冒険者の募集を目的にやってきたのだ。もしよかったら貴殿らもこの依頼、クエストを受けてはくれないか?」
じっと見つめる瞳にウソはなさそうだ。
「ありがたい申し出ですが、あいにくうちのパーティリーダーが不在なので決めかねます」
いきなり舞い込んだクエストの依頼に面食らいつつ、次の金策にうってつけの話に俺は内心、喜んでいた。
これはケイウッドを説得してでも受けたい話だ。
俺はガルドに、あとで冒険者ギルドで他のパーティメンバーも加え、晩メシを食べながらでもくわしい話を聞かせてほしいとお願いした。