オーガに怯まず
声がしたほうを見やると広間の入口付近に保護された子どもが座りこみ、そのそばにケイウッドが立っていた。
《気配消し》で子どものもとまで行き、子どもにも《気配消し》をかけて救出する。
その時間を稼ぐのが俺とベルナンディアの役割だった。
これでもう人質を気にかけて戦う必要はなくなった。
そして、ケイウッドも加わってパーティとして戦える。
「待たせたな、シュージ!」
「遅いぞ色男!」
2対1なら数で勝てる。
ゴブリンは分の悪さにひるみつつも深く考えることなく、こちらにつっこんできた。
ガツン、とゴブリンの攻撃を楯で防ぎ、隙だらけの横腹をケイウッドが切り裂く。
「ギアアッ!」
痛みに体勢を崩したゴブリンのこん棒をもつ手をこちらのこん棒でぶん殴る。
武器を弾き飛ばされ、痛みにうめくゴブリンの背後からケイウッドが最後の一撃を刺し込む。
ゴブリンは苦しそうにうめきながら崩れ落ち、動かなくなった。
俺とケイウッドはすぐに広間を見渡してドワーフの少女を探した。
ベルナンディアはオーガの巨大なこん棒にこちらも巨大な両手斧を打ち付けて一歩も引かずに戦っていた。
「すげえ……」
「感心してる場合じゃない。俺たちも加勢するぞ」
力と力でぶつかり合う戦いぶりは迫力がある。
ケイウッドが感嘆する気持ちはわかるが見とれているわけにはいかない。
「ベルナンディア、いま助けにいく!」
俺とケイウッドは巨体に立ち向かう少女に加勢すべく、駆け出した。




