人質
最深部の広間にはオーガ1体、ゴブリン5体が徒党を組んで待ち構えていた。
そして、そいつらの奥には長い黒髪の子どもが囚われていた。
「おいおい、モンスターって人質取ったりするわけ?」
「知能の高いモンスターなら有り得るかもしれんが、果たして……」
「オーガやゴブリンがわざわざ人質を取るなんて話はまず聞かないな」
不自然な状況だった。
通常のゴブリンもオーガもけっして知能は高くない。
人質を取るというのは交渉材料を手に入れるということ。
そんなまどろっこしいことをするようには思えないのだ。
人間とみれば単純に襲いかかってくるのがやつらの習性だ。
「あの子どもに何かあるのかもしれないが、どうするよリーダー?」
人質の救出を優先するか?
「決まってるじゃないか! オレたちは勇敢な冒険者! 強きをくじき弱きを助けるのが使命さ!」
そういうと思ったぜ。
「ケイウッド、ヌシも良い心根を備えておるの」
「惚れてもいいんだぜ、ベルナンディアちゃん!」
俺たちは目配せをし、すぐに作戦を理解した。
俺とベルナンディアがオーガどもへ歩を進める。
ケイウッドは一旦、道をもどって曲がり角に姿を隠した。
作戦開始だ。