リーダー決定
「えっ! ベルナンディアちゃん、レベル5なの!」
「うむ。冒険者になる前からモンスター退治もしていたからの。おそらくその分が加算されておるのじゃろう」
「オレたちより大先輩じゃないか! どうしよう、シュージ!」
「いや、どうもこうもないだろ」
「やっぱり一番レベル高い人がパーティのリーダーになるべきだよね……」
お前はそんなことで大声を上げていたのか。
「いやいや、わしはリーダーに向いておらん。むしろ指示に従って忠実に行動するほうが気楽でええ。その点、シュージは冷静な判断力があるように見えるがリーダーは務めんのか?」
お鉢がまわってくると思ったよ。
「えっ、シュージがリーダーやるの?」
「やらないよ。俺は落ち着いてはいるのかもしれないが、人の上に立ったり他人を動かしたりするタイプじゃない。むしろ、そういうのはお前のほうが向いてるんじゃないか?」
頼りがいだけがリーダーの素質ではない。
場の雰囲気を明るくしたり、人の気持ちを動かすような性質の持ち主にこそリーダーの役目が似合うだろう。
……まあ、ぶっちゃけ人をまとめるのってめんどくさそう。
「え、オレ? オレがリーダー? マジで?」
自分を指さし、うれしさが表情からあふれている能天気な盗賊。
「ヌシが嫌でなければ良いのではないか?」
「じゃあケイウッドがリーダーってことで決定だな」
「ま、マジかー! オレがリーダーなんて、いやいや、やるからには全力でがんばっちゃうよ!」
うむ、お前はいつも楽しそうでうらやましいな。
「よし! じゃあ最初のリーダー命令だ!」
そうか、俺はお前に命令されてしまうのか。
「三人で力をあわせてこのダンジョンを踏破するぞ!」
あまりに素直なその命令に俺は思わず吹き出してしまった。
釣られてベルナンディアも笑いをこぼす。
「へ? オレ変なこと言った?」
きょとんとするケイウッドがさらにおかしさを誘う。
「いや、なんでもないさ。みんなでこんなダンジョン、クリアしてやろうぜ」
「じゃな。三人で力を合わせれば不可能など吹き飛ばせるじゃろう」
ベルナンディアも笑いながら同意した。
ケイウッドだけなぜ笑っているのか理解できていないようだったが、最後には自分も笑いの渦に加わった。
リーダー誕生、そしてパーティ新生。
俺たちはダンジョン中に響きわたれとばかりに笑い、自分たちの歩く道をたしかに踏みしめた。