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水の湧き出るところ
ドワーフの少女、ベルナンディアに聞きたいことはいろいろあったが、まずは負傷者の手当てが優先だ。
「ケイウッド、とりあえず肩を水で冷やそう」
「悪いな」
《無限の宝庫》から水袋を取り出そうとすると横からベルナンディアが割って入ってきた。
「水ならこの先の突き当たりの岩の隙間から湧き出ていたぞ。飲み水を消費するより、そちらを使ったほうが良くないかの?」
思わぬ助言に俺は色めきたった。
「悪いがベルナンディア、そこへ案内してくれないか?」
水が湧き出ているところには福がある。
俺の推測が正しければケイウッドの治療ができるかもしれない。
「合点承知じゃ!」
握りこぶしをつくってベルナンディアはうなずいた。
窮地を救ってくれたことといい、ドワーフの少女が信頼できそうな人物で助かった。
ゴブリンどもが現れたときは女神アエラに文句の一つも言いたい気分だったが、今は見事に手のひらを返して感謝している。
「こっちじゃ! ついてくるがよい!」
俺はケイウッドに肩を貸しながらベルナンディアの小さなうしろ姿を追った。