スライムが連れてきたもの
なんとかラージスライムを懐柔して、戦闘を避けたのも束の間、スライムがやってきた出口のほうから騒がしい足音が聞こえてきた。
「ケイウッド、今のスライムは俺たちを襲おうとしてたんじゃない。何かから逃げてたみたいだ」
「それって、つまり……」
青く腫れはじめた肩をかばうように手をかざすケイウッドの言葉に、
「ああ。スライムを倒しそこねた冒険者たちだといいんだがな」
スライムを追いかける冒険者なら何も問題ない。
だが、中にはモンスター同士で縄張りをめぐって争ったり、空腹を満たすために捕食したりすることもある。
スライムを捕食するモンスターは想像できないから足音の主が冒険者であることを勇気の女神アエラに祈ろう。
胸の前で手を合わせたところで、ケイウッドの疲れきった声が聞こえた。
「マジかよ……」
俺はなかばうんざりしながら広間の出口に視線を向けた。
一難去ってまた一難。
さすがに今度ばかりはまずいかもしれない。
現れたのは先ほど倒したのと同じ種類のゴブリン、それも三匹だった。
「女神アエラも初心者に過酷な運命を課してくれる」
俺はしまったナイフをふたたび取り出した。