ダメージ
崩れ落ちるゴブリンを捨て置き、ケイウッドのもとへ駆け寄る。
「おい、大丈夫か!」
小さくうめいているケイウッドの体を抱えおこし、打撃を受けた箇所を確認する。
よかった。
幸いにもゴブリンの一撃はレザーアーマーの肩当てで防がれていたようだ。
肩当てがボコボコにへこみ、ゴブリンの力がいかに強かったかを物語っている。
「つッ……!」
ケイウッドが顔を歪めた。
肩当てを上にあげると、その下からは真っ赤になった肩が顔を出した。
骨は折れていないように見える。
おそらく打撲で済むだろうが、これではこれ以上の戦闘は不可能だ。
腕をすこし動かすだけでかなりの激痛が走っているのだろう。
ケイウッドの額にはびっしり汗が浮かび、歯を食いしばって痛みに耐えているのが伝わってくる。
「シュージ……」
「無理するな。肩を貸すから今日は引き返そう」
俺が提案するとケイウッドは苦しげな表情で首を横にふった。
「オレなら、大丈夫だ……。まだやれる……」
「何いってんだ! そんな状態でまたモンスターに出くわしたら、まともに戦うどころか命を落とすぞ!」
「オレは、初心者を、卒業するんだ……!」
ケイウッドの目には決意がこもっていた。
冒険者登録してから何ヶ月もその日暮らしの生活をしてきた。
冒険者らしいこともできず、せっかく仲間を得てはじめてのダンジョンに挑んでいる。
この機会をムダにしたくない、そうケイウッドの目が語っていた。
それでも命あってのモノダネだ。
ダンジョンなんてまたいつでも来られる。
そう俺が説得しようとしたとき、広間の二つある出口の一つから何かがのそりと現れた。