連携
傷を負ったゴブリンは痛みのせいで頭に血がのぼったのか、歯をむきだしにして威嚇する。
だが、そんな威嚇に恐れをなす俺じゃない。
俺は忠実に自分の役割を果たすことだけを考える。
ゴブリンに向かってナイフをつき出して牽制する。
楯を構えて守ろうとするゴブリンを尻目にサッと身を引く。
これを何度かくり返す。
しだいに業を煮やしたゴブリンは俺の牽制を気にもとめず、ふたたび大ぶりの一撃を仕掛けてきた。
もちろん冷静に攻撃を避ける。
今度は腕ではなく、太ももにナイフの刃を切りつける。
「グギギッ!」
ヒット&アウェイのくり返しでゴブリンの冷静さを奪う。
これがねらいだった。
俺は一歩うしろへ引き、ゴブリンの追撃を避けると同時に合図した。
「今だ!」
ゴブリンを挟んで向こう側、ちょうどゴブリンの背後に《気配消し》で近づいていたケイウッドが姿を現した。
「おおおッ!」
ケイウッドが全体重を乗せ、ゴブリンに体当たりする形でナイフを突き刺した。
「……浅い!」
ケイウッドの攻撃が加わる直前に彼の存在に気づいたゴブリンが若干、背後に身をひねった。
そのせいで背中に突き立つはずだったナイフはわき腹を切り裂くにとどまり、致命傷を与えることができなかった。
「さがれ、ケイウッド!」
当然ながら不意打ちを受けたゴブリンは反撃をねらい、
「ギギギッ!」
こん棒を大きくふりかざし、ケイウッドをねらった。
「避けろ!」
指示の声はケイウッドの耳に入り、意味を与えることなく抜けてしまった。
はじめて敵意を向けてくるモンスターを前にし、ケイウッドは恐怖に足がすくんでいた。
「ちぃッ!」
駆け出すも、ふり上げられたこん棒が獲物に襲いかかるほうが早い。
ゴブリンのななめ横からの一撃が肩を直撃し、打撃の勢いのままケイウッドは吹き飛ばされた。
俺は即座に背後からゴブリンの背中にナイフを刺し込み、確実に息の根をとめるため、喉笛にもナイフを走らせた。