元素の乱れ、邪悪の根源
『万物は元素から成り立っている。同様に大陸の元素も均衡を保っているからこそ安定している。だが、もしその均衡が崩れたとしたら……?』
試すかのような問いかけには俺が答える。
「元素のバランスが崩れれば、万物の秩序が乱れる」
『然り』
おいおい冗談じゃないぞ。
大陸全土を巻き込んだ、めちゃくちゃスケールのでかい話になってきたじゃないか。
こんな規模の話は「コレクターズ」にも存在しなかったぞ。
『バーンドレッドでも元素の乱れから異常が起こり始めている。お前たちも身に覚えはないか?』
言われてすぐに思い付いたのは魔侯爵と狂豚王の存在。
そして各地で魔物が活発化しているという話。
魔侯爵は俺とおなじ転生者の事件だったから例外かもしれないが、少なくとも狂豚王については腑に落ちない点も多かった。
俺がそのことを伝えると、
『なるほど、それも元素の乱れが生み出した厄災のひとつかもしれぬ』
炎の精霊は何か思案をめぐらせたかのように一拍置き、
『これは憶測に過ぎぬが、邪悪の元素が高まりつつあるせいかもしれぬ』
邪悪の元素……!
すぐに浮かんだ邪教ダースデワルズの神託のウワサ。
近々、魔王が生まれるとかいうとんでもない与太話だ。
だが、もしそれが本当の話だったとしたら……。
『邪神ダースデワルズの託宣か。ありえぬ話ではない。黒の地母神アングレタの影響も無視できぬであろうからな』
黒の地母神アングレタ?
そんな神の名前は聞いたことがないぞ。
仲間たちを見ても初めて聞いたという顔をしている。
これもこの世界、コレクタネス独自の要素ということか?
『アングレタはダースデワルズの妻であり、暴虐の神だ。俗世に関与することを夫であるダースデワルズが禁じているという説もある。我ら精霊の間でもその存在を知る者は少ない。だがもし、かの地母神の影響が強いのであれば……』
魔王は生まれ落ち、世界は混沌に包まれるということか。