地下の休憩所
ベルナンディアの自然魔法で地下を掘り進めていく。
大きく座標がズレないよう、ゆるやかに螺旋を描くように下っていくことにした。
隊列は穴を掘るベルナンディアを先頭に魔法で灯りをともすネムリ、俺。後ろから殿を守るエルスラに「敵影感知」で警戒するケイウッド、間に挟まれる形でメルティエだ。
ケイウッドのスキルで予見されたロック・ワームはベルナンディアが両断してどんどん進み、数時間が経とうとしていた。
「すこし休憩するかの」
狭い穴ぐらを延々と進むのは精神が摩耗する。
俺はベルナンディアの提案に賛成した。
やや広めに空間を掘削し、そこを休憩所とした。
「あ〜、なんか地味に疲れるな」
「閉所に居続けるのはなかなか気が滅入るもんだな」
俺が「無限の宝庫」から出した水袋と簡単な焼き菓子をケイウッドに渡してやる。
メルティエが焼き菓子を口にしつつ、
「目的地はまだだいぶ先なのですか?」
水を口にふくんだベルナンディアが答えた。
「言い伝えでは国の直下、深いところに巨大な地下空洞があるという話じゃが、どれほどの深さかは見当がつかんの。ましてや崩落を避けるため大きく迂回して下っておるから、いつごろ着くかは神のみぞ知る、じゃな」
この返答にはメルティエだけでなくケイウッドも大きなため息を漏らした。
ある程度の道幅が確保されているダンジョンや開けた野外ならまだしも、警戒しながら黙々と細くて狭い地下道を下っていくのは思った以上にしんどいものだ。
「ネムリは疲れてないか?」
「うん! ベルが掘った土からたまに出てくるキラキラした石とか見るの楽しいよ!」
ネムリは子供らしい純真さで鉱石などの初めて目にする物珍しいものに好奇心が満たされているようだった。
このあたりは大人と子供の差なのだろうな。
「エルスラは疲れてないか?」
「問題ありません」
一応、スライムであるエルスラにも声をかけたが元々モンスターである彼女にとって閉鎖空間での作業はあまり苦にならないようだ。
このあたりは人間や亜人種とモンスターの精神構造の違いなのかもしれない。
腰を下ろして一服し、調査を再開しようとした時、ケイウッドがするどい声をあげた。
「みんな気をつけて! すごい速さで何かくる!」