差異の擦り合わせ
「で、具体的に同じ、または似ている部分と、まったく異なる部分にはどんなものがあるのじゃ?」
俺はアイテムや魔法、地名や一部の人名が同じことと同時に、魔侯爵や狂豚王の存在が未知のものであったことを告げた。
また、魔侯爵が自分と同じ異世界人であり、あの魔侯爵の館がゲーム的な構造になっていたことも伝えた。
「なるほどね。あの館、変な感じだったもんな〜」
「まるで侵入者を試しているようでした」
「あとはクラス固有のスキルも違いかな。それにこの世界には魔王にあたる魔族がいないとか」
「あー! そういえば出会ったときに言ってたな!」
あの時は軽薄な盗賊にバカにされたことを俺は忘れていないぞ。
「まさかそんなことを確認してただなんて思わなかったんだよ〜」
「でも、シュージの知ってる世界との違いが気になりますね。いずれも不穏なものばかり……」
魔侯爵に狂豚王、そして耳にはさんだ魔王復活の神託があったという邪教ダースデワルズの件。
そして、ネムリの不思議な力と種族……。
魔祖の吸血鬼、と狂豚王マドンは今際の際に言い残していた。
「ボク、悪いモンスターなのかな……?」
不安そうなつぶやきをケイウッドが笑い飛ばした。
「ははは、そんなことあるわけないさ!」
「強い力ではあるが要は使いようじゃよ」
「そうだぞ、ネムリがモンスターだったらケイウッドなんて二日酔いモンスターだ」
「おいおい! 言うに事欠いて!」
「違いない。わしも酒飲みモンスターになってしまうな」
「酒飲みモンスターのベルちゃんは……う、うーん、急に頭が……」
バカな話でネムリを励ましているとドワーフ族の遣いが酒宴の用意ができた旨を伝えに来た。
すぐに向かうと言伝てして俺たちはぼちぼち席を立った。