本当の気持ち
ここだけの話にすることを誓ってもらい、俺は自分の正体について話し始めた。
「俺はこの世界の人間じゃない。もっと別の、まったく違う世界からやってきた」
おどろく盗賊とエルフ、意味が分かってなさそうな美少女、どこか超然とした態度で納得しているようなドワーフ、関心のなさそうなメイド。
それぞれ異なる反応で俺の言葉を受け止めた。
「俺のいた世界には魔法もモンスターもなかった。代わりに技術が発達していて、遠くにいる相手の顔を見ながら話したりすることができる世界だった」
この世界との差異だけをかいつまんで説明していく。
そして一番大切であろう話について、
「俺の世界ではゲーム……遊戯の一種というのかな。そのゲームに「コレクターズ」というものがあった。それは異世界で剣や魔法を操ってモンスターと戦ったりするゲームだった。俺はそのゲームに熱中し、ありとあらゆるアイテム、魔法、クラス、種族などを極めた」
ここで察しのいいベルナンディアは勘づいたようだ。
「何が言いたいかというと、そのゲームの世界と俺たちが今いるこの世界が非常に似ているって話だ」
他のみんなも慌てこそしないが驚き、というより戸惑いを隠せていなかった。
無理もない。
異世界からやってきた、なんて話だけでも信じられないだろうに、さらにその異世界にはこの世界に酷似した世界観の遊戯があったというのだから。
この世界にやってきた当の本人、俺でさえ驚いたことだ。
「そのゲームの世界とこの世界とにどういう関係があるのかは分からない」
俺は一番大切な思いを口にした。これだけはみんなに分かってもらいたい。
「でも、俺はこの世界で過ごしてきて、この世界は作りものではない本物だと思うし、この世界に生きられることを嬉しく思っている」
これだけは偽らざる本当の気持ちだった。