ドワーフ王国の姫君
「よくぞ帰ってきた、我が娘よ」
立派なヒゲを蓄えたドワーフの王が玉座から声をかけた。
重々しく太い声には王としての威厳がある。
隣に座っている王妃も嬉しそうな笑顔をたたえている。
「不肖、騎士ベルナンディア、ただいま帰還いたしました」
ベルナンディアを筆頭に俺たちは膝をついて頭を下げていた。
おそらく本人を除いた全員が内心で思っていることだろう。
ベルナンディア、お前ドワーフ王国のお姫様だったのかよ!
そりゃ色んな姫様がいるだろうけどさ、気さくで大酒飲みで戦闘狂なドワーフが、まさか一国の王女様だとは思わないだろ!
「そちらの方々はお前の仲間かね」
「厚い信頼のおけるパーティメンバーです」
「ふむ……」
ドワーフ王はあごヒゲに手をやり、俺たちの顔を品定めするようにぐるりと見渡した。
そして一拍。
「ふふふ……よい仲間を持ったのぉ、娘よ!」
先ほどまでの威厳はどこへやら。
ドワーフ王は玉座から立ち上がり、俺たちへ歩み寄りながら楽にするよう告げた。
「うむうむ、みな良い面構えをしておる。娘が世話になっておるな」
俺たちを立ち上がらせ、順ぐりに握手をしていく気さくさはなるほど、大酒飲みの娘とおなじ血を感じさせる。
分厚く石のように硬い手のひらは同時にこの王様が戦士としてかなりの手練であることもうかがわせた。
「いえ、俺たちのほうこそベル……姫様にお世話になっております」
「よいよい、堅苦しい話し方もなしじゃ。娘が無事に、それも良き仲間を連れて帰ってきたのじゃ。無礼講じゃ!」
ガハハハ、と豪快に笑う度量はさすがドワーフの王様か。
俺たちも王様の人柄にほだされ、緊張を解いた。
そこへ王妃様の隣でおとなしく座っていた少女が駆け寄ってきた。