本命の獲物
懐柔したヒドラの小瓶に薬草水を注いで傷を癒してやり、俺とメルティエ、エルスラは改めて本来の目的、邪眼を持つ巨人へ向かって駆けた。
見ればベルナンディアとオルカが先頭に立って巨人のこん棒による猛打を捌いていた。ケイウッドは弓で、バンドウが刀で隙をついて牽制、ネムリとイルカは攻撃対象とならないよう距離を置いて待機している。いい判断だ。
「遅くなってすまない!」
「待ってたよ、参謀殿!」
「そろそろ本気を出して良いのかの? わしの《巨人殺し》が早く戦わせろと疼いておる」
「あの目ん玉さえ傷付けなけりゃあいいんだろう?」
血気にはやる戦闘狂どもに許可をくだした。
二人は水を得た魚のように雄叫びをあげ、隻眼の巨人に怯むこともなく猛進していく。
サイクロプスの力任せのこん棒の殴打をベルナンディアが渾身の力任せで両手斧を打ちつけてはじき返す。
その間にもオルカがぐるりと回りこみ、バランスを崩した巨人のかかとを力任せに斬り飛ばした。
巨人の絶叫。構わず正面の向こうずねを暗い赤色の巨大斧でかち割るベルナンディア。
痛みに悲鳴を上げる巨人にもはやこの二人の暴力を止める手だてはなかった。
ただ、ひたすらに切り刻み、肉を切って骨を断つ暴力の波に呑まれるしかない。暴れて振り乱す手足も即座に寸断されていく。
騎士と剣士の嵐のような猛撃に俺たちは息を飲んだ。




