新しい仕事
そう来るんじゃないかと思った。
今度は俺がうんざりした顔を浮かべ、それに対してオルカはふてぶてしく脅してくるのだった。
「シュウジ、先の一件には倍以上の礼を返したぞ。てめえのツラに書いてあらあ。喜んで協力させていただきます、ってな」
鬼人族の宝刀を複製したことをかなり根深く恨んでいるな、これは。
自分だけの唯一無二の愛刀を模造されたとなれば、剣士としての矜恃に傷がつくのだろう。
気持ちはわからないでもないが、ぶっちゃけめんどくさい。
だが、俺の本当の力も目にしているだけに軽率に要求をツッパねるわけにもいかない。
めんどくさいやつに正体を明かしてしまったものだと俺は後悔した。
「わかったわかった、釣りを返す。やってやるよ。魅了にかからないようにすればいいんだろう?」
俺の言葉にオルカより先にイルカが食いついた。
「そのようなことが可能なのですか!」
イルカは純真にも目をキラキラ輝かせて見つめてきた。
その眼差しには尊敬の念がこれでもかと盛り込まれている。
同じ兄妹でこうも違うものかね。
オルカは少しばかり妹の爪の垢を煎じて飲んだほうがいい。
「みんな、次の仕事は山登りだ。異論はあるか?」
冒険に飢えた仲間たちは無言で承諾の意を返した。